【読書日記】カッチャーリ『ヨーロッパ地理哲学』
カッチャーリ, M.著,上村忠男訳(2025)『ヨーロッパ地理哲学』講談社,293p.,2,050円.
この手のタイトルを見たら買わざるをえません。しかし、目次を見ても、私自身が何かを期待した、あるいは書名から期待したものが書かれていることを確信したわけではない。訳者の上村忠男さんが、カルロ・ギンズブルグの訳書の多くを手掛けているという著名な方である、ということで購入した次第。最近は、こうした専門書は買ってもなかなか読む機会がないが、大阪で開催されていた自治体学校に参加することになり、旅のお供に読むことができた。なお、ギンズブルグについてネットで検索したら、今年の6月に亡くなったとのこと。
第I章 ヨーロッパの地理哲学
第II章 戦争と海
第III章 英雄たち
第IV章 歓迎されざる客
第V章 不在の祖国
正直言うと、この読書から得られたものはほとんどない。意味は取れなくても難解な文章を読み進む快楽をえられる読書もあるが、本書はそうではなかった。読み進むのに困難を感じるような難解さではないのだが、ほとんどの文章がすっと頭から抜けて行ってしまうような感覚。
そもそも、私はこの本に何を期待したのだろうか。それは、哲学というものの対象として「ヨーロッパ地理」があるもの。実際に「地理哲学」という語は、かつて地理学者も唱えたことがあった。それは地理学的思考に哲学を盛り込むという試み。しかし、本書がそういうものではないことは、もちろん読み進めながらも感じたことだが、訳者解説で理解した。そもそも本書における「地理哲学」とはドゥルーズ&ガタリの『哲学とは何か』の用語だという。その系譜としては日本語訳が出ているのに結局購入はしていない、ロドロフ・ガシェ『地理哲学――ドゥルーズ&ガタリ『哲学とは何か』について』がある。
要は、本書が論じているのは「ヨーロッパ地理」に関する哲学ではなく、いわゆる(西洋)哲学はヨーロッパという地理的独自性を帯びたものであるという意味合いになる。とはいえ、それはそれでリヴィングストン『科学の地理学』のような、哲学の地理学という意味で比較的わかりやすい主題となりえるはずだが、本書は上記のいずれでもないし、両方でもない、そう簡単なものではない。ある意味では、以前読んだマニャーニ『古代地中海をめぐるゲオグラフィア』と近いといえるかもしれないが、古代に限定して議論されているこの本とは違い、本書は特に時代を限定しているわけでもない。
なお、私は著者の名前を初めて知ったが、同じ上村さんの訳で『抑止する力――政治神学論』(2013年、月曜社)、『死後に生きる者たち――〈オーストリアの終焉〉前後のウィーン展望』(2013年、みすず書房)、『必要なる天使』(柱本元彦訳、2002年、人文書院)といった翻訳書があるようだ。しかも、著者はヴェネツィア市長をしていた人物で、その前には下院議員もしている。そんななか、次々と著書も刊行していて、市議会議員になったぐらいで論文も書けなくなってしまった私とは雲泥の差だ。いずれにせよ、まだまだ修行は足りない。


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