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建築のイコノグラフィーとエレクトロニクス

ロバート・ヴェンチューリ著,安山宣之訳 1999. 『建築のイコノグラフィーとエレクトロニクス』鹿島出版会,277p.,4300円.

最近,ようやくヴェンチューリを読み始めた。
1966年に発表された『建築の多様性と対立性』(翻訳は1982年),および1972年に発表された『ラスベガス』(翻訳は1978年)はどちらも鹿島出版会のSD選書に収められている。しかし,1996年に発表された本書を読んで,ようやくヴェンチューリについて分かったような気がする。
『ラスベガス』から本書までの20年以上の間に何冊も著書を発表していると思っていた。でも,違っていて彼の経歴は面白い。実際の建築設計をする建築家が,晩年に建築史家や建築批評に転じることはよくある。しかし,ヴェンチューリはその逆なのだ。30歳台で大学で教鞭を取り,40歳代で2冊の建築批評書を発表した後,大学を辞して建築設計を始めたのだ。いわば自らの建築理論を実践に移したといえようか。
前2書によるヴェンチューリの建築理論を一言で表現するのは難しいが,『ラスベガス』の原タイトルは「ラスベガスから学ぶ」であり,信念を持っている多くの建築家は見向きもしない,ラスベガスの商業主義丸出しの建築物からも学ぶことは多くある,というのがヴェンチューリの主張である。
エドワード・レルフという地理学者が『場所の現象学』(原題は「場所と没場所性」1976年)においてまさに「没場所的な」景観と呼んだ,巨大な看板と原色使いのけばけばしいネオンの建築物は,それなりの理由をもって,ラスベガスというその場所(高速で自動車が通り過ぎるロードサイド)でこそ成立したヴァーナキュラーな景観だというのだ。しかし,このヴェンチューリの主張は,あまり知られていない地理学者,J.B.ジャクソンのそれと似ているようだ。残念ながらジャクソンの文章は全く日本語には訳されていないので,きちんと彼自身の文章は読んでいないのだが。

さて,それから20年以上経った1990年代に書かれた文章を集めた本書はかなり変わっている。前半は自らの建築思想,および建築設計において影響を受けたものについて素直に書かれていて読みやすい。そして,自分の設計した建築物についての回想。この辺から毒を吐き始める。建築にはコンペティションがつきものだが,そのシステムに対する批判。自らの作品に向けられた批判に対する反批判。最後の方には「某建築評論家宛の未送付書簡」などという文章すらある。建築における正当な美学の何たるか全く分かっていない私にすればヴェンチューリの主張はごもっともに思えるが,それは無批判に受け入れすぎだろうか。
ともかく,これほど異端な人生を第一線で歩んできたこの人物には敬服いたします。

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