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都市空間の地理学

随分以前にmixi日記で書いた文章だが,こちらでなら多少なりとも同業者の目に触れるかもしれないので,転載することにしたい。

加藤政洋・大城直樹編 2006. 『都市空間の地理学』ミネルヴァ書房,304p.,3000円.

1962~1979年生まれの地理学者(社会学者2人含む)が執筆した最近の地理学の動向を教科書的にまとめた論文集。
自分で書くのもなんだが,私が執筆者に名を連ねてもおかしくない本だが,よく考えると他にも外れている研究者が何人か思い浮かぶし,地理学の執筆者のほとんどが西日本在住ということからも,この偏りは編集作業上の問題だと理解することにしよう。

本書にはあとがきはなく,短い「はじめに」が編者名でつけられている。冒頭から「人文地理学の一分科に都市地理学があります。」という大学一年生に当てたような文章から始まり,「都市地理学の枠組みにはとらわれず,都市を読み解く手法や構えをわかりやすく紹介する目的で編んだテキストです」とあるので,学部生,ないしは地理学以外で都市に関心のある学部生・院生が対象かと想像される。

確かに,初歩的な人が読むには学ぶことが多いかもしれない。しかし,これをテキストにして講義をするとなるとどうだろうか。なんかとても中途半端なような気がする。
そもそも,本書で紹介されているような内容は学問体系のなかで通り一遍学ぶようなものではなく,学問分野の境界を越えて,都市や空間に関心を持っている研究者たちが,時にはそれとは全く関係がないように思われる文学理論や美術史,フェミニズム理論から新しい視点を手に入れることによって都市や空間の新しい解釈へと導いてきたものだ。学ぶべきことが選択的に先に与えられるのではなく,問題関心があるべきものではないだろうか。

まあ,恐らく編者や著者は,分かりやすく浅く広く拡げた風呂敷から,それぞれ関心テーマを選んで,その先は自分で深めるようにと願っているのだろう。
でも,恐らく実際多くの学生はオーソドックスな研究テーマをする傍らで,新しいこともつまみ食いするような傾向を助長するのではないだろうか。

私は自分の関心に従って,本書に登場する地理学以外の論者たち,ベンヤミン,ドゥボール,ド・セルトー,バルト,バトラー,バージャー,ルフェーヴルを読んできた。そこから議論を展開してきた英語圏の地理学者と同様に。しかし,本書で学ぶ研究者はどうなるだろうか。英語圏の地理学者を介して間接的にしかそうした思想家の議論を知らなくて済んでしまうのではないか,そんな危惧がある。
そもそも,すでに本書の執筆者たちにもその気はある。自身のオリジナルの研究と,本書で受け持っている章の内容とが直接は結びつかないのだ。

まあ,愚痴はいくら書いても止まらないし,非生産的なのでこの辺にする。やっぱり私が執筆者として選ばれなかったのは,私がかれらに距離を感じているように,かれらも私に距離を感じているのだろう。
私の論文は1本たりとも引用されていない。

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