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John Wylie 2007. Landscape. London: Routledge, 246p.

先日の日記にも書いたように,ついに洋書を外出先に持ち出して辞書なしで読了しました。研究者仲間とどれだけ英語の文献を読むのか大変かって話はしたことがない。私は正直いって,英語の文献を読むのは苦手だ。かつて,著作の3章分を翻訳し,それらはきちんと活字になって残っているが,読む速度は遅いし,正直理解度はイマイチだと思う。それでも,けちな性格なので,読んだ文献は必ずといっていいほど引用したくなるし,実際している。
これまで,英語の著作で読破したのは両手の指で足りるほどしかない。それでも,一度は雑誌に書評まで書いた。日本語の本の100分の一程度しか読んでいない。大学院を修了して,外国語の雑誌が身近になくなってからは,それをよいことに,英語に触れる機会がかなり減った。昨年度は自分を奮い立たせるために,英語の本を法政大学の講義「地理学」で用いたが,学生にとってどころか私にも難しすぎる内容で,半分で断念。
しかし,ちょっと発想を転換して,どうせ日本語の本でも完全に理解できないものが多いのだから,理解できないということを恐れずに,軽い気持ちで洋書も読んでみてもいいのではないかと思った。というのも,新宿紀伊国屋の洋書コーナーでちょうど新刊の本書をてにとってそんなことを考えたのだ。この著者は私の知らない,一番古い論文が2002年だというから恐らく私よりも全然若い気鋭の英国地理学者。

ちょっと話は戻るが,『人文地理』という雑誌の書評は洋書,もしくは入手困難な貴重な和書に限定している。普通,書評というのは新刊書の紹介であるから,10年前の本を読んでも書けない。そう,私はまずこの今年発行されたばかりの本書でようやく『人文地理』に書評を投稿できるのではないかと思ったのだ。私が所属している他の学会には当然複数回書評を掲載してもらっている。いまだ果たしていないのが『人文地理』だけなのだ。

ということで,書評を書くつもりなので,しかもいつにも増して内容が専門すぎるので,ここで分かりやすく説明するにはそれこそ,1本の論文が必要だ。でも,なかには地理学者でこのblogを読んでいる人もいるかもしれないので,目次くらいは示しておこう。ちなみに,landscapeとは「景観」や「風景」と訳されます。ここでは,景観に統一しましょうかね。

1 序
1.1 緊張
1.2 景観の目的と構造
1.3 小結:前を向いて
2 景観化の伝統
2.1 序
2.2 カール・サウアーと文化景観
2.3 W.G.ホスキンス:景観,郷愁,そして憂鬱
2.4 J.B.ジャクソンと「土着の」景観
3 見方
3.1 序
3.2 景観と線遠近法:芸術,幾何学,そして光学
3.3 文化的マルクス主義:美術史と景観
3.4 文化的マルクス主義と文化地理学:「覆い」としての景観
3.5 テクストとしての景観:記号論と文化的意味の構築
3.6 フェミニズムと精神分析:まなざしとしての景観
3.7 議論と要約
4 景観の文化
4.1 序
4.2 物質的不安
4.3 景観,生産,そして労働
4.4 景観の文化:自己,権力,そして言説
4.5 景観,旅,そして帝国主義
4.6 小結
5 景観現象学
5.1 序
5.2 現象学の紹介:埋め込まれたまなざしから生きられた身体へ
5.3 景観と住まうこと
5.4 「景観化」:現象学,非‐表象理論,そしてパフォーマンス
5.5 景観現象学の批判
5.6 小結
6 景観への見通し
6.1 序
6.2 記憶,同一性,紛争と正義
6.3 景観,政体,そして法
6.4 景観の終焉?関係性,生気説,トポロジー地理学
6.5 景観記述:自伝,運動,存在,そして影響
6.6 結論:創造的緊張

私の知っている地理学における景観研究は4まで。といっても,精確には3まで。まだ3すらろくに研究の進んでいない日本において,なぜか4で論じられる研究者が,わずかに紹介されている(ドン・ミッチェルのことです)。そして,著者自身は,自身の研究として5を進めながらその先を見通しているというもの。
詳しくは書評に書きますが,良い意味と悪い意味と2つの危機感を感じる読書でした。一つは研究に対するモチベーションがすっかり下がっているここ数年ですが,本書で紹介される刺激的な論文をいくつも読みたいと思ったこと。私がサボっている間に面白そうな議論が次から次へと進んでいるということです。そして,悪い意味での危機感は,上述したように,日本の地理学では3の研究が僅かに出てきて,それでも多くの古い研究者からは疎んじられているというのに,英語圏ではそんなことをやっている研究者がもういないということだ。本当にファッションのように,英語圏では古いものが次から次へと批判され,新しいものが求められているような印象があるのは,まあこの著者が新しいものを目指して躍起になっているということを差し引く必要はあると思うが,研究というのはそう簡単に古臭くなったりしていいいものなのだろうか。

本書は「key ideas in geography」というシリーズもので,故にタイトルはシンプル。目次は教科書的になっている。なので,どちらかというと誰がいつ何をいった,的な記述が多く,込み合った本質なところまではつっこんでいないため,辞書を使わずとも思ったよりも理解できたのではないでしょうか。翻訳もしてみようかと考えて読み始めましたが,少し考えものかな。
とりあえず,書評書こう。以前,mixi日記の方で宣言した『双数について』の書評もまだ完成していませんけどね。

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