« 長い一日(木曜日) | トップページ | 東経大後期初日 »

All thet is solid melts into air

Marshall Berman 1982. All thet is solid melts into air: The experience of modernity. New York: Penguin Books, 383p., U.S.$16.00.

外出先で辞書なしで洋書を読むという試みを開始して,『landscape』が意外にも早く,そして内容もそれなりに理解できたので,調子に乗って読み始めたのがこちら。『landscape』について書いた日記が9月1日だから,読み終わるまでに1ヶ月以上かかったということだ。しかも,内容はほとんど理解していません。
著者のマーシャル・バーマンは日本ではあまり知られていない。同じバーマンでも,ジークムント・バウマンは最近翻訳が立て続けに出ているが,こちらのバーマンは翻訳された文章を知らない。英語の論文を読んでいると,この本がよく引用されているので,洋書店でペンギンブック版をみつけたときに思わず買ってしまったもの。でも,正直なところはそんなに多くの引用例はしらない。書名が長くて意味不明でインパクトがあるので,記憶に残っているだけかもしれない。
本書の書名「All thet is solid melts into air」はカール・マルクスの『共産党宣言』のなかの一節だという。実は私も太田出版版の『共産主義者宣言』を読んだことがあるが,あとでこの言葉を探したが見つからなかった。なので,いまだに定訳は知らないが,直訳すれば,「固体である全てのものは空気へと溶け出す」となる。思い切って意訳すれば「形あるものは全て亡くなる」ということだろうか。
それが,『共産党宣言』のなかのどのような文脈で使われていたのか,そして本書はこの言葉を近代性の問題とどう関連させているのか,そこがポイントだ。にもかかわらず,そこを読み取れなかったのだから情けない。
一応,形式的なことを書けば,本書は4部構成になっている。もちろん,その前に序文と,最後にまとめの言葉がついています。1部はゲーテの『ファウスト』から近代的主体性を読み取ろうとするもの。この作品で登場する「変態」によって,人々は前近代的主体から近代的主体へと移行したのだ。2部はマルクスの著作から,近代の代表的な制度である資本主義経済を中心に,社会の近代化を論じる。3部ではボードレールの作品を通して街路という公共空間における視線の問題を論じる。このテーマはベンヤミンでよく知られる議論だが,本書においてはあまりベンヤミンへの言及もないし,ベンヤミンのものとは重ならないような議論を展開している。そして,分量的にも一番多い,4部はペテルブルクというロシアの都市を中心に,プーシキンやドストエフスキーといったロシアの作家の作品を利用して,近代期に低開発状態だった都市におけるモダニズムの状態を論じている。

と偉そうに書いてみたが,これはほとんど目次から推測される内容だ。本文を読んでもその詳しいところはほとんど読み取れていない。そもそも,固有名詞が分からないというのもあるし,ある程度自明視されている歴史的事実に関する知識の不足もある。でも,それ以上におそらく本書の翻訳本を読んでも理解できない部分は多かったのではないかと思う。それはよくあることだ。なんだかんだいって,地理学者の書く本は比較的分かりやすい。
ただ,私なりに,特に序文で分かったことは,本書は近代という時代を広く理解されているよりももっと複雑で,しかも矛盾したものとして捉えることを提案しているのだと思う。一般的には近代は「合理性」に支配された時代であり,現代は既に近代=モダンを終え,ポストモダンの時代に入ったと気軽に主張する人が多い。でも,本書は最後の章で1970年代までを論じていて,現代でも近代は続いているのだという。
この近代観はフーコーの『言葉と物』の影響下にあるのではないかと思う。私が『言葉と物』を読んだときはかなり衝撃的だった。自分が理解している「近代」というものが,フーコーの説明のなかでは近代以前の「古典主義時代」に位置づけられ,彼が近代と呼ぶ時代には既にポストモダンの特徴だと理解していた要素が含まれているのだから。

さて,本書はいわゆるペーパーバックの代表格であるペンギン・ブックの1冊。コンパクトで非常に軽いが,紙が薄いので,それでも300頁以上あるのだ。よく我慢して活字を追ったと思う。この我慢の読書体験を通じて,思うことはけっこうあった。小説は物語の筋があるので,途中の内容が理解できなかったりすると,読み進めることが意味なくなってくる。
しかし,この手の本は途中が分からなくても,1文1文から学ぶことはある。そう考えると,1冊の書物というのは,1文1文の間に,段落間に,節の間に,章の間に,どれだけ有機的な関係性があるのだろうか,あるいは要求されるのだろうか。作者はどれだけそれを意識しているのか,読者はどれだけそれを期待し,実際に掴み取っているのだろうか。私はどうやら自分で文章を書くときもこの辺の意識が希薄なようなんです。

|

« 長い一日(木曜日) | トップページ | 東経大後期初日 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/218863/16682212

この記事へのトラックバック一覧です: All thet is solid melts into air:

« 長い一日(木曜日) | トップページ | 東経大後期初日 »