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人間の条件

ハンナ・アレント著,志水速雄訳 1973. 『人間の条件』中央公論社,373p.,1600円.

アレントはドイツ人ですが,本書は1956年にシカゴ大学で行われた講義がもとになっているようで,1958年に英語で発表されたもの。彼女の肩書きは政治学者とされることが多いが,半世紀を経た今日においても読み注がれる彼女の研究の関心は多岐に及んでいる。
数ある著作のなかから初めて読む彼女の著作として本書を選んだのは古書店で比較的安く売られていたという偶然によるものだが,この1冊を読んだだけでも,その知見の広さと論理展開の確かさに感服する。本書は目次を見ただけでは面白みに欠けていて読書のモチベーションは上らない。しかし,読み始めるとどんどん引き込まれていく。本書は確かに難しいのだが,けっしてストレスを感じるような難解さではない。
文体に男性的とか女性的とかいうのは避けたいところだが,柔らかすぎてついていけないデリダや,堅すぎて面白くないハーバマスとは違っていて,しっかりしているんだけど退屈ではなく刺激的な文章はやはりクリステヴァに近いものがある。というより,クリステヴァがアーレントの本を書いているくらいだから影響を受けているのだが。
本書のタイトルはあまりにも漠然としたテーマである。本書を読んでいると,時折書名を忘れてしまう。本書は「人間の条件」というテーマを設定して,そこから派生的にさまざまなトピックに発展していくようなものではなく,いくつかの事柄についての議論が,どこを切ってもこのテーマに結びついている,そんな構成になっている。

そして,本書には「近代」への問いがあると思う。本書のベースにはプラトンとアリストテレスがいて,本格的に検討されるべく存在としてのデカルトがいる。人間は何をする動物か。そのことを考察するために,第3章から第5章までの表題につけられた3つの概念を丹念に検討するのだ。その3つの概念とは,「労働」と「仕事」と「活動」だ。そして,もちろんデカルト以降の時代の重要な著者としてのマルクスも検討される。

今回も,傍線を引いた箇所の引用でお茶を濁そうか。
「人間の条件は,人間が条件づけられた存在であるという点にある。いいかえると,人間とは,自然のものであれ,人工的なものであれ,すべてのものを自己の存続の条件にするように条件づけられた存在である。」(p.163)

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