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歴史

ヘロドトス著,松平千秋訳 1971. 『歴史(上)』岩波書店,468p.,720円.

皆さんはヘロドトスをご存知だろうか。『オデュッセイア』や『イリアス』の著者として知られるホメロスは恐らくご存知だろう。紀元前8世紀ギリシアのホメロスに対して,ヘロドトスは紀元前400年代のギリシア人。ホメロスが詩人という肩書きにされるのに対し,ヘロドトスはその書名が大きいのだろうけど,「歴史の父」と呼ばれている。
しかし,当然紀元前のことですから,時計もなければ世界標準時なんてありゃしない。わたしたちが「歴史」という時の絶対的な規準としている時間の概念が明らかに違うのだ。しかも,わたしたちは歴史学と歴史を分け,さらに歴史小説なるジャンルがあるように,フィクションとノンフィクションを分けている。歴史学は信用に足る史料を探すところから始まり,それを他の研究者と共有することがルールである。
そうした歴史(学)のあり方は当然ヘロドトスの時代から2500年の間にできたもの。特に近代期以降に時間の概念が客観的なものとして理解されてからといえるだろう。

なので,この『歴史』は非常に素朴な記述である。そもそも今日でも,英語ではhistoryとstoryと分かれたが,フランス語ではhistoreとは歴史であり物語であり,単なる記述でもある。とにかく本書には固有名詞が頻出する。地域名や民族名,もちろん人物の固有名まで。もちろん,この翻訳書ではすべてカタカナ表記なので,読んでいて訳が分からなくなります。馴染みのない名詞はそれが地域名なのか個人名なのかも分からず,地域名と民族名が同じであることも珍しくない。
まあ,そんな調子で中巻,下巻と持っていますが,とりあえず上巻でやめておきました。本書には丁寧に巻末に詳細目次がつけられています。これを眺めるとこの長大な記述にはやはり物語的なものがあり,それこそが本書が「歴史」と名づけられているのだろうと思う。しかし,私には全くそのつながりは見えてきませんでした。そもそも,ここに書かれている話が,本書が書かれた時代からどのくらいさかのぼった時代の話なのか。まあ,そういうことを気にしてしまったらいけないんでしょうね。
私は講義のためにヘシオドス『神統記』やアポロードス『ギリシア神話』も読みましたが,それらに近いものがありますね。さきほど,わたしたちの思考には常にフィクションとノンフィクションを区別してしまう,ということを書きましたが,そういう評価は本書には通用しないのです。

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