« 寒くて開場待ちも楽じゃない | トップページ | 200番目の日記! »

Television

Raymond Williams 1974. Television: technology and cultural form. Wesleyan University Press: London, 153p.

テレビ研究といえば,日本ではジョン・フィスクの翻訳に偏っている。ハートレーとの共著『テレビを〈読む〉』(1978,未來社),大著『テレビジョンカルチャー』(1987,梓出版社),テレビ研究に限定されないが,『抵抗の快楽』(1989,世界思想社)。翻訳されているフィスクのテレビ研究は,基本的に記号論の枠組みに依拠している。それに対し,テレビ視聴者の問題を探求した社会学者にデヴィッド・モーレーがいるが,管見の限り彼の翻訳は1編の論文に限られている。それが収められたのが,テレビ研究の多様性を日本語で確認できる論文集,『メディア・スタディーズ』(せりか書房,2000)である。モーレーの「テレビジョン,オーディエンス,カルチュラル・スタディーズ」の他に,イエン・ヤング「経験的オーディエンス研究の政治性について」,リン・スピーゲル「家庭の理想型と家族の娯楽」が含まれ,その他日本人研究者のオリジナル論文も掲載されている,なかなかいい論文集です。
1992年に再販されたウィリアムズの本書には,このスピーゲルが序文を寄せている。この序文がけっこう難しい。ここで,ウィリアムズの説明もしておこうか。ウィリアムズは1980年代後半に亡くなってしまったが,英国批評の伝統を受け継ぎながらも,マルクス主義的新左翼の立場から批評の対象を文化的作品一般に拡げるとともに,それを独立して論じるのではなく,常に社会のなかで,その政治性をにらみながら,社会学に近いものとして,「文化唯物論」を主張した人物だ。翻訳には,私でもいまだに入手していない『文化と社会』,『長い革命』を代表作として,その後に名著『田舎と都会』,『コミュニケーション』『文化とは』『キーワード辞典』などがある。
『コミュニケーション』は英国の印刷メディアの状況を,具体的な内容分析を通じて論じたもの。本書『テレビジョン』はその続編ともいえる。しかし,本書の特徴はその副題「技術と文化形式」にある。この時代のテレビ論といえば,『メディア論』のマーシャル・マクルーハンであり,この技術決定論をウィリアムズは本書で批判している。マクルーハンの本は1960年代に発表されたが,その時代に新しく登場した電子メディアとしてのテレビにマクルーハンは大きな社会変革の期待をかけ,有名な「地球村」という概念まで生み出したのだ。
それに対し,ウィリアムズはテレビという新しい技術に基づく新しいメディア形式は,それまでいくつかあった古い技術と古いメディアの組み合わせにすぎないと主張している。それは視覚的な写真であり,それに運動を与えた映画であり,聴覚的なラジオであり,また,伝えるべきメッセージ次元での技術としては新聞や雑誌といった印刷技術である。もちろん,それらを組み合わせ電波によって広範囲におよび視聴者に同時間的にメッセージを伝えるのはテレビだけが用いる新しい技術であることも確認しての上だが。
ともかく,これまで社会のなかに浸透した古いメディアに対し,テレビのどんな部分が新しいのかを詳細に論じているのが本書との特徴といえる。なので,読んでいてもテレビに関する議論であることをあまり実感しないまま進んでいく。やっぱり微妙なニュアンスは英語では読み取りにくいです。
そして,中盤に「flow」という概念を導入して,具体的な番組プログラムの分析に移ります。この辺が『コミュニケーション』の続編という感じのするところです。英国と米国,国営放送と民放,5つの放送局を取り上げて,それぞれがどんなジャンルの番組を放映しているのか,そしてそれらの番組の連続性が時間帯とともにどう組織されているのか,そんな分析です。続いてはニュース番組の会話まで引用して分析していますが,この辺はサッパリ分かりません。日常会話的英語って苦手なんですよね。
そして,最後にはテレビの代替的利用と題して,テレビという新しいメディアの新しい可能性について議論されています。1974年に書かれた本なのに,1980年代のこととか書かれていて不思議。

|

« 寒くて開場待ちも楽じゃない | トップページ | 200番目の日記! »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/218863/40193465

この記事へのトラックバック一覧です: Television:

« 寒くて開場待ちも楽じゃない | トップページ | 200番目の日記! »