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パラケルススの薔薇

ボルヘス, J. L.著,鼓 直訳 1990. 『パラケルススの薔薇』国書刊行会,174p.,1800円.

ボルヘスについてはもう説明は要らないだろう。そして,彼の『伝奇集』には「バベルの図書館」という小文があり,またイタリアの出版社が同名のシリーズを刊行する企画の編者にボルヘスを選んだということもすでに述べた。
そして,この「バベルの図書館」シリーズの1冊として,このシリーズの企画者フランコ・マリーア・リッチの計らいにより,ボルヘス自身の短編集もこのシリーズに加えられたというわけだ。本書に収められた短編は以下の通り。

1983年8月25日
パラケルススの薔薇
青い虎
疲れた男のユートピア
等身大のボルヘス――マリア・エステル・バスケスによるインタビュー

訳者は『伝奇集』と同じ鼓氏なので,私がボルヘスの作品にも好き嫌いがあるというのは,やっぱり訳のせいではない。ともかく,この短編集はとても面白かったのだ。ボルヘスの作品を,初めて『不死の人』を読んだときの驚きをもう一度味わうことができた。そして,本書には貴重なインタビューと,そしてボルヘス年譜・書誌までついているところが嬉しい。
パラケルススとは16世紀前半に生きた錬金術師であり医者である。天文学から物理学,化学に生物学と,緩やかに近代科学へと移行する時期です。大学における文献医学を批判しながら,ヨーロッパ各地を遍歴しながら民衆たちの医療行為を行った人物。日本語でも『奇蹟の医書――5つの病因について』(工作舎)が読めます。それからも分かるように,パラケルススはルネサンス期の科学的思考を受け継いでいて,医学は天文学と密接な関係があります。そんなこんなで,パラケルススは奇怪文学のジャンルにも入れられるボルヘスの物語に相応しい人物。「1983年8月25日」では年代の違う自分自身がであったり,「青い虎」は未開の地での伝説の動物と,そして現地の人びととのやりとり。うーん,素晴らしい想像力です。

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