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エッフェル塔

ロラン・バルト著,宗 左近・諸田和治訳 1979. 『エッフェル塔』審美出版,100p.,890円.

1969年に「記号学と都市の理論」と題した講演を行なった(1975年の『現代思想』に翻訳あり)ロラン・バルトだが,日本について論じた1970年の『表徴の帝国』(翻訳1974年,新潮社)とともに,本書は都市の記号学的解釈の書といえる。
実は本書の翻訳にはみすず書房から,エッフェル塔の写真を散りばめたちょっと大判のものが出ていて,学生時代に大学図書館で借りて,バルトの文章部分だけをコピーして持っていた。しかし,数年前に古書店でこの審美出版のを見つけて購入しておいたのだ。こちらも,最近話題にしているバベルの塔論の延長線上で読む時期がきたと思い,読んだ。本書でバルト自身の文章は約半分で,残り半分は訳者によるバルト論になっている。発行当時はバルトを理解する助けになるだろう文章だが,今日読むには逆に本文の印象を薄めてしまうような気がして残念。
一般的にバルト前期と呼ばれる時期の作品で,構造主義的思考として特徴付けられる。確かに,ちょっと押し付けがましい断定的な解釈が多いが,やはりそれは非常に魅力的でもある。例えば,『象徴の帝国』を日本という国を日本語も読めない著者が面白おかしく論じたオリエンタリズム的なものにすぎない,という批判もあるが,あくまでもバルトは彼自身に現前する記号としての「日本」を論じ,しかもその記号が「中心の空虚」というまさに記号の本質を体現している記号であることを強調したにすぎない。本書のような小文はパリ全体ではなく,それを象徴する一つの記号要素であるエッフェル塔を取り上げたものにすぎないが,やはりそこには記号としての都市パリが念頭に置かれていて,パリを表現する中心でありながら記号内容に満たされていない過剰な記号表現としてエッフェル塔を捉えている。そうなると,同じ時期にデリダによって論じられたポスト構造主義的記号論に近い主張がすでに含まれているようにも思える。
まあ,今日でも「都市の記号論」が成立するかどうかは疑問だが,そのことを考えるためには必読の書だ。

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