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World hypotheses

Stephen, C. Pepper 1942. World hypotheses: A study in evidence. University of California Press: Berkeley, 348.

本書は,1973年に発表された歴史学者ヘイドン・ホワイトによる大著『メタヒストリー』のなかで大々的に取り上げられて有名になったが,1942年というかなり古い作品なので,もともとどんな文脈で描かれて,そして当時の哲学界にどんな風に受け入れられたのかはよく分からない。そもそもホワイトの取り上げ方はやはりかなり恣意的なのだ。ホワイトは新しい歴史研究のあり方を模索するなかで,カナダの批評家,ノースロップ・フライの『批評の解剖』(1957),米国の批評家,ケネス・バークの『動機の文法』(1945),そしてドイツのカール・マンハイム『イデオロギーとユートピア』(1929)。どれも日本語訳が出版されているし,それぞれの著者の本はその多くが日本語訳されているので,それぞれの作品の位置づけも理解しやすい。それに対し,この『世界仮説』と題されたそして裏表紙には「Philosophy」とのみ分類のためのジャンル名が書かれている本書はやっぱり読んでみないと分からない。
そもそも,私は上記3冊を日本語で読んだが(実は日本語訳『動機の文法』にはホワイトが利用している部分は収められておらず,別の日本語訳『象徴と社会』に収められている),ホワイトのかなり図式的な利用は,その3冊を読んでもピンとこないのだ。つまり,ホワイトが各著書から引き出した図式的な内容というのはホワイト自身の都合の良い解釈によって引き出されたものであるといえる。
と『メタヒストリー』の話ばかり書いているが,実はこの本も『現代思想』のミシュレ特集の時に,ミシュレに関する箇所が一部分だけ翻訳されたにすぎない。数年前に翻訳が出るという情報もあったがまだ出ていない様子。私も実は50ページほど必要な箇所を拾い読みしただけだったりして。
ともかく,どこかの洋書コーナーで本書を見つけて思わず購入したものの,なかなか手をつけなかったわけだが,思い切って外出先に持ち出して読み始めましたが,辞書なしで哲学の洋書をそう簡単に読めるはずがありません。理解度は2割ほどのまま1ヶ月近くかかってしまったようだ。
ちなみに,実は本書で展開されるペッパーの「ルート・メタファー」理論は日本語でも若干紹介されている。1968年と1973年に『思想史事典』というのが刊行されているが,そのなかの「哲学におけるメタファー」という項目が1987年に翻訳されているのだ。そこから考えても本書の中心は「ルート・メタファー」論であり,ホワイトが引き出したものは本書の場合,かなり原著に忠実だといえる。この「ルート・メタファー」とは①形式論,②機械論,③有機体論,④コンテクスト論,の4つにまとめられているのだが,この説明に入る前の論述は馴染みがなくとても難しい。
とりあえず,目次を示しておこう。

第1部 ルート・メタファー理論
I. 絶対的懐疑論
II. 教条主義
III. 証拠と確証
IV. 仮説
V. ルート・メタファー
VI. 世界における不適切の事例
第2部 相対的に適切な仮説
VII. 諸仮説の一般的見解
VIII. 形式論
IX. 機械論
X. コンテクスト論
XI. 有機体論
第3部 要約,批判,回答
XII. 回想と結論

やはり,ヨーロッパでは真理に関する哲学の歴史が深く,懐疑論や教条主義など,あるいは真理の対応説など,漢字を見てもピンと来ない哲学的な思考形態がある。そう,『メタヒストリー』に影響を受けた地理学研究でアン・バッティマーの『地理学と人間精神』(1993)というのがあるが,そこではホワイトの説をそのまま利用するのではなく,改めてペッパーの本書を地理学の観点から読み解くことで,真理に関する諸説を説明していたが,その時からチンプンカンプンだった。この辺は改めて西洋哲学史を勉強しなくちゃなって思います。4つのルート・メタファーについてもやはりホワイトが論じるほど図式的ではなく,また具体的な歴史的な論者の事例が詳しく挙がっている訳でもないのでやはり理解には程遠い読書でした。でも,部分的にはとても面白かったことも確かだし,何らかの訓練になるだろう。

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