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雨続き

8月23日(土)

恋人の家で迎えた朝。彼女は昼間に近所でアルバイトだというので、私は家に残されて、前日借りてきたレンタルDVDを一人で観ることにする。わが家では小さなノートPCなのでDVDで2時間の映画を観る気にはならないが、彼女の家ではMacのデスクトップなので、けっこう観やすい。借りてきたのは塩田明彦監督の長編デビュー作『月光の囁き』。借りた時には忘れていたが、そういえば喜国雅彦による原作漫画は全部ではないが読んだ記憶がある。主演が水橋研二とつぐみという、邦画ファンのツボをつくキャスティングだ。といっても、まだ2人とも駆け出しの頃だと思う。1999年公開のこの作品で、撮影時に実年齢は20歳を越えていると思うが、高校生役。同じ剣道部に所属している2人。水橋は密かにつぐみに憧れ、盗撮写真や靴下などを密かに蒐集し、一人で愉しんでいる。しかし、とある日、水橋が友人に頼まれたラヴレターをつぐみに渡そうと一緒に帰る道すがら、つぐみから告白されてしまう。実るはずのない一方的な恋が実ってしまうと、逆に意味がないんですよね。そう、あくまでもこの男が求めていたのは、自分の方を向いていない状態での彼女だったのだ。この作品は、表面的にはそういうことではなく、この男が性器同士の接触よりも足に快感を覚えるといういわゆる形骸化された「フェティシズム」をテーマにしている。でも、この男の心情はもっと奥深いと私は思う。ともかく思春期のエロティシズムを上手く映がいた作品だと思う。このDVDは劇場公開から5年経って製作されたらしく、特典映像として、監督と原作者、主演の2人のトークセッションが含まれていた。この内容も興味深い。やはりこの2人の主演だったから良い作品になったと思うし、特につぐみはこの作品で彼女独特な演技が開花したのではないか。

さて、映画を観終わって駅で待ち合わせ。この日は渋谷で映画『デトロイト・メタル・シティ』を観ようと、15時の回の1時間以上前にシネフロントに到着したが、直前で「立ち見」マークになる。まあ、公開初日だからしょうがないと思い、その場で第二候補だった『TOKYO!』のチケットを買って、向かいのシネマライズへ。

渋谷シネマライズ 『TOKYO!
こちらも満席。この作品は東京という都市をテーマに、日本の俳優を用いて、アメリカのミシェル・ゴンドリー、フランスのレオス・カラックス、韓国のポン・ジュノという3人の外国人監督がメガホンを取った短編集。『エターナル・サンシャイン』『恋愛睡眠のすすめ』で大好きなミシェル・ゴンドリー、『ポーラX』で不可解な刺激を与えてくれたレオス・カラックス。名前を忘れていたが、『ほえる犬は噛まない』で私の韓国映画嫌いを克服させてくれたポン・ジュノといういずれも魅力的な監督が東京を舞台にどんな世界を描き出すのか。
初っ端のゴンドリーにやられます。なにやら本人のサイトを見ると、多彩な活動をしている藤谷文子が主役。相手役に加瀬 亮。どこかで読んだところによると、当初チョイ役だった加瀬の演技をゴンドリー監督が気に入って出番を多くしたとのこと。演技はともかく、不可解なことが身に降りかかる藤谷文子と摩訶不思議な演技の加瀬 亮だけでも十分楽しめるが、2人がころがりこむ部屋の住人を演じる伊藤 歩ちゃんのぶっ飛んだ演技も見もの。そして、なんてことない役に妻武木 聡や大森南朋などを贅沢に使っているのもいいね。でんでんも出てるよ。ともかく、PVで培われたゴンドリーの不思議ワールド全開で興奮!短編ということですが、2時間で3人だから、思いの外長くて十分楽しめます。
続いてはレオス・カラックス。「下水道の怪人」という、緑色のスーツに身を包んだ、爪も髪も髭も伸び放題の外国人が銀座や渋谷の街を闊歩するという不可解な物語。下水道のなかになぜか第二次世界大戦中の日本軍の駐留した痕跡があり、そこで地雷を手にした怪人は渋谷の街でそれらをばら撒き一般人の多くを殺害する。そのことで逮捕され、世界で数人しかしゃべれないという言語をしゃべり、裁判になり、死刑が執行されるまで。もちろん、作品全体がギャグだとは思うのですが、カラックス監督独特の恐怖さえ覚えさせる暗~い雰囲気。どんなメッセージが込められているのか、分析するのも面白いかもしれません。
ラストのジュノ監督作品は、香川照之の引きこもり男が主人公。家から出ないので必需品は買い置きするのと、家にいるので退屈であるのと、一人暮らしの引きこもりは必然的に整理整頓魔になるという仮設。退屈しのぎに大量の本を読破したというその詰まれた本のなかに、雑誌『現代思想』らしきものがあったのには笑う。土曜日には決まってビザを注文し、決まって蒼井 優演じる配達人が届けにくるというシチュエーション。他人と接触したくないがために引きこもりをしている主人公だから、当然配達人と目を合わせたりはしないのだが、ある日このピザの配達人と目が合ってしまう。そこからは、恋物語。荒川良々などの名優(?)がちらほらチョイ役で出ているのにも注目。ほのぼのしていて素敵です。そうそう、これが『ほえる犬も噛まない』の雰囲気でしたね。
かつて、日本人監督による『Jam films』という短編集があり、こちらも不可解な設定でまあまあ面白かったけど、やっぱり短編といっても3本くらいがいいよね。ともかく、個人的には大満足でした。

そのまま2人で下北沢へ。久し振りのお好み焼き。美味しかったけどけっこう高いんだよねえ。

下北沢ラ・カーニャ casa
ラ・カーニャ初出演のcasa。この日は2ステージですが、2ndではトランペッターの島 裕介さんと3人の演奏。2人で赤ワインを頼んだら、その味に恋人が飲めないというので、2杯飲む。気持ちよくなって、夕紀子さんの美しい歌声にウトリウトリ。いやあ、こういうのもいいものです。恋人はあちこち移動してシャッターをパチリパチリ。まあ、お客さんは10人程度だったこともあって、「常連、また来たね」といって島さんが挨拶しにきてくれました。恋人を紹介するとなんだか島さんも嬉しそう。casaに参加する島さんも久し振りだったので、嬉しい。バンド編成で島さん付きってのも魅力ですが、2人に島さんだけ加わるというのもシンプルで素晴らしい。オリンピックも大詰めで天気も悪い日でしたが、やっぱりもっと多くの人にcasaのライヴを聴いてもらいたいなあ、と思う夜でした。

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