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涼しくなって油断していると蚊に刺される

9月6日(土)

渋谷ライズX 『ビューティフル・ルーザーズ

この映画館は本当に久し振り。地下にある20席くらいの小さな映画館なのに客席は2階建てになっていて,1階の最前列はとても見上げるということだけを覚えていて後ろの方にしたらちょっと遠かった。そんなに古い映画館じゃないはずなのに,なぜか壁には「1990」と書かれた書名が。前の用途の時のままの壁なのでしょうか。
さて、映画の内容ですが、ドキュメンタリーです。ニューヨークに集まった貧乏アーティストたちが、貧乏ギャラリーに集まってちょっとしたサブカルチャーを築いていくって話。グラフィティアーティストが多い。かれらはニューヨークという街で暮らし、定職に就かないから、生活とアート、アトリエと街との区別がない。普段からスケートボードで街を徘徊し、その辺に作品を残す。1970年代初頭にデイヴィッド・レイという地理学者が都市研究の一環としてギャングによる落書きに注目した。それは犬のおしっこと同様に、どこに、どんな絵柄を描くかということが、ギャングの縄張り意識と関係するという話。それは日本の暴走族の話としても定説になっている。しかし、20年くらい経つと状況は変わり、かれらのような落書きそのものを目的とする人たちが出てくる。そんなことを落書き研究その後のような形で論文にした地理学者ティム・クレスウェルってのがいたっけ。落書きというのはその場に描かれるがゆえに意味があるのに、アートになると、壁ごと引き剥がしてギャラリーや美術館に飾られたりする、という本末転倒が起こるわけですね。バスキアなんてのは有名になったグラフィティ・アーティストの典型かもしれない。
しかし、本作に登場する人たちは、その辺についてのこだわりもある。金持ちになろうと思って作品を作っているわけではないのだ。ルーザーズってのは「負け犬」のことだが、かれらの価値観は勝ち負けにはない。そもそもグラフィティってのは器物損害の犯罪であり、何かに対する抵抗である(その点、東京の落書きは小規模店舗の壁面とかに描いていて、弱者を困らせているだけだ)。それも含め、一般的な価値観を転倒することが作品製作に含まれているのだ。といっても、子ども心のわがままと好き勝手を実行しているだけで、大人の世界の政治には全く関心はないようだが。この映画を観ている限りでは、かれらの生活はいかにも健全だ。しかし、このなかに出てくるなかで唯一私が知っていた映画監督のハーモニー・コリン。かれの描く映画はとてもアンダーグラウンドだ。子どもが盗みを働く、銃を保持する、ドラッグに酒、セックス。しかもそれを悪いことだと訴えるようなメッセージがあるわけではない。
まあ、ともかく実際のかれらの生活はどんなんだろう。映画だけでは、「ルーザーズ」といいながらもそれなりの成功をおさめている、つまり時折はお金がついて、いい環境で作品作りができるような状況。なんだか、意外にやりたいことを信念持ってやり続ければどうにかなるよ、的なハッピーなメッセージだったような気がする。

なぜかいろいろあって恋人と三軒茶屋で食事。東京餃子楼にて。そして,私は一人で池ノ上へ。

池ノ上bobtail
久し振りのbobtail。なんと,先日マスター羽場さんからメールがあり,羽場さんは今年一杯で引退してしまうそうです。後任は現在マスターの飯島 健さん。まだ若いのに,シンガーとしても活動しているのに,大変だ。前にも書いたように,ちょっとお酒に弱い今日この頃なので,餃子屋でビールも飲んだし,この日は養命トニックをいただく。
hacomaco:まったく知らなかった男女2人組。でも,男性のほうに見覚えがある。ギターだけでなく,カホンも叩くようだし,ん?宮田まことさんでした。ヴォーカル&ギターの方は葉子(ようこ)さんというそうで,2人で「はこまこ」だということ。bobtailはこういう意外なところがまた面白いですね。しかも,hacomacoとしては初出演とのこと。まあ,いきなり「スゴイ!」ってことはないけど,歌声もきれいだし,なかなか面白いのではないでしょうか。
casa:この日は美宏君がエレキギターも用意してきたかと思えば,守屋さんはコントラバスこそ持ってこなくてエレキベースだったけど,なんとチェロを持参しています。まあ,チェロが弾けるということよりもチェロを持っているということに驚く。やはり本人が照れていたように,演奏の方は抜群というわけには行きませんが,組み合わせ的にはとても面白いステージになりました。アンコールはありませんでしたが,9曲たっぷり,夕紀子さんの衣装を作っているマルヤマさんが3日前に誕生日を迎えたというふりから「横にて」を演奏し,ここでは守屋さんはピアノをポロポロ。本当に守屋さん,面白いです。そして,casaの2人によくあっているなあ。曲が多いのであまり喋らないといいながら,けっこう喋ってしまう夕紀子さん。そして,またステージ上での姉弟喧嘩になりそうな場面も。まあまあ,仲の良い証拠です。このユニットは当分安泰といって欲しいもの。

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日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

お久しぶりです.

9/6の日記,興味深く拝見させていただきました.

実はしばらく前からグラフィティのフィールド調査をやっており
そろそろまとめようと文献を集めている最中でした.
クレスウェルというと,かつて『10+1』にも何か掲載されていた
ような記憶があります.あとは,たしか In Place/Out of Place
とかなんとか….リン・ステーリ(本岡訳)を読み返す必要が
あるかなぁ.

それにしても,最近になってグラフィティに関する文章を目に
する機会が増えたように感じます.森正人さんの『大衆音楽史』にもグラフィティのことが触れられていたし….

投稿: 青木 | 2008年9月 9日 (火) 21時52分

>青木さん
こんばんは。お久し振りです。
同じコメント2回入っちゃいましたね。投稿者は消せないんですよね。消しておきました。

そして,なんとグラフィティ研究を手がけているとは!
私の勝手な青木さん像からはちょっと想像できません(失礼!)。なにやら面白そうですね。
クレスウェルの論文は『10+1』の2004年34号ですね。「ナイト・ディスコース」という文章です。当然訳者は地理学者ではありませんが...
『10+1』も終刊してしまい,とても残念です。

森君の本も早速読んだんですね。すごいよね,いきなり中公新書だし,随分大きなテーマだし。脱帽です。
あー私の著書執筆計画も頓挫しております...

投稿: ナルセ | 2008年9月10日 (水) 00時28分

久しぶりの投稿です。

グラフィティの調査報告みたいなものを,ようやくまとめる
ことができました。うまく書けているかどうかは別として
間もなく投稿予定です。

投稿: あおき | 2009年8月20日 (木) 23時58分

>あおきさん
久し振りの書き込み,ありがとうございます。
お元気にしていますか?

論文投稿とは,おめでとうございます。
まあ,これからが大変かもしれませんが,スムーズに掲載されることを祈っています。
私も書評くらいでも投稿しなくちゃ。

投稿: ナルセ | 2009年8月22日 (土) 16時09分

こんばんは。
グラフィティの調査報告は,一度修正を経て
なんとか受理されました。
今になって,もう少し別の書き方があったなとは
思いつつ,一安心といったところです。やれやれ。

投稿: あおき | 2009年11月 4日 (水) 21時31分

>あおきさん
またまた,古い日記に書き込みありがとう。
そして,返信遅くてすみません。
受理とのこと,おめでとうございます。
どこですかね。私の入っている学会誌だといいんですが。
掲載されるのを楽しみにしています。

投稿: ナルセ | 2009年11月 6日 (金) 23時21分

来月,「地理空間」に掲載される予定です。

投稿: あおき | 2009年11月 8日 (日) 16時21分

あおきさま

ほー,例の噂の学会ですね。
ちょっと私には縁遠いな...
抜き刷りなどありましたら,お送りくださいませ。

投稿: ナルセ | 2009年11月 9日 (月) 19時40分

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