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ユートピアの系譜

ルイス・マンフォード著,岡 裕三郎訳 1971. 『ユートピアの系譜――理想の都市とは何か』新泉社,316p,1200円.

都市研究をしながらも,マンフォードの本は1冊も読んだことがなかった。今回の本も都市研究の一環というよりは歴史的な内容の講義用に。ユートピアといえば,もちろん口でゴムをくわえてパッチンするお笑いコンビではなく,トマス・モアによる1516年の著作『ユートピア』で用いられた造語。この作品で描かれた理想郷を,理想との都市との関連で論じたのは,ルイ・マラン『ユートピア的なもの』(法政大学出版局)だが,本書は1922年に発行されたその先駆に当たるもの。しかし,原題には「系譜」という言葉はなく,「The story of utopias」である。なので,一応本の構成は歴史順となっているが,時代が原題に近いほど分量は多く,多くは18,19世紀に当てられている。実際にヨーロッパで近代都市が形を成す頃のことのほうがマンフォードの関心があることは当然といえば当然。しかし,彼はモアをユートピアの起源にするのではなく,紀元前のギリシア都市国家アテネ,プラトンの『国家』から議論を始めているのは意外な発見だった。ちょうど今,並行してプラトンの『ポリティコス』を読んでいて,かなり関わりがあるので,まだ読んでいなかったことを後悔。講義はもう始まるので,時代を下る順番である以上,『国家』を取り上げるのは間に合いません。ともかく,ソンタグやアレントで時折登場した「洞窟の寓話」について知ることも含めて,『国家』は早く読まなくてはなりませんね。
マンフォードは初めてでしたが,やはり研究者というよりは批評家,あるいは作家というべきですかね。久し振りに注のない本で読みやすかったですが,全体的に文章がさらっとしていて,決して軽い内容ではないのですが,軽く読めてしまうことがちょっと物足りなかった。といっても,ウィリアム・モリス『ユートピアだより』(1890)だけでなく(ちなみに,この本の原題は「news from nowhere」でユートピアという言葉は使われていない),『タイム・マシーン』で有名なウェルズにも『モダン・ユートピア』(1905)という作品があったり,学ぶことも多い。今度,違う観点から読み直すのも面白いかもしれない。

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