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進歩とユートピア

ドッズ, E. R.他著,桜井万里子他訳 1987. 『進歩とユートピア』平凡社,322p.,1800円.

本書は「ヒストリー・オヴ・アイディアズ」叢書のなかの1冊。前にも紹介したことが会ったかもしれませんが、原著は思想史辞典のようなもので、それを邦訳では、テーマごとの項目を集めて30冊で刊行している。私はまだ3冊しか持っていないが、古書でもけっこう高値で売られているものもある。この「進歩とユートピア」は私が講義でユートピア文学の歴史を取り上げていることもあって、購入した。
その講義はもう終わってしまうが、この叢書は版も小さく、持ち歩きやすいので読んでみた。以下のような項目が収録されている。

古典古代における進歩
近代における進歩
新旧論争
人間の完成可能性
ユートピア

予想していたよりもユートピアに当てられたページ数は少ない。進歩や進化の考え方が含まれているジャンルとしてユートピア文学が、一つの事例として取り上げられている(というよりは翻訳の段階で選択されている)にすぎない。
私の大まかな思想史の理解では、基本的にダーウィンの進化論が生まれる19世紀までは、宇宙を構成する万物は旧約聖書の創世記にあるように、神がある時期に一度に全てを多様なものとして作り出して、その多様性は変化せずに歴史は推移してきたと考えるのが一般的だ。しかし、現存しない生物の化石や、人間の思考の変化の観察(学問の発展を代表とする)などから、ダーウィン以前の時代から進歩や進化を謳った作品は少なくないことは理解しているつもり。
それでも驚くべきことかどうか微妙だが,「進歩」という概念については古代からあるというのだから面白い。そもそも,進歩と進化というのはどう違うのか。まあ,辞書の項目にすぎないから詳細な議論がなされるわけではないが,ほとんど何も知らなかった私にとってはそれだけで面白い。でも,キリスト教神学的な考え方が時折終末論や目的論と結びつくことを考えれば,進歩という概念が長い歴史のなかで常にそれなりに重要な位置を占めてきたというのはふしぎではない。その行き着く先としての「人間の完成可能性」という議論もとても面白い。そして,社会の進歩・進化の最果てが「ユートピア」だというわけだ。

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