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郊外の社会学

若林幹夫 2007. 『郊外の社会学――現代を生きる形』筑摩書房,231p.,720円.

先日,難波功士さんの『創刊の社会史』を読んで知った,同じちくま新書の本書を早速BOOK OFFで購入。私は本書を書くきっかけとなった,パルテノン多摩での若林氏の郊外に関する講演を聴いているし,冒頭で取り上げられているドキュメンタリー映画『ニュータウン物語』もしっかり観ている。でも,若林氏の著作は意外にも『地図の想像力』(講談社メチェ 1995年)しか読んでいないんだよな。
さて,一応私も都市研究者の端くれなので,本書の冒頭に繰り広げられる郊外論の基本的なところは知っていて退屈。特に,三浦 展などの話はうんざりだが,もちろん本書は彼の議論に与するわけではなく,そういう言説がなぜ生まれるのかを明らかにしようとする。三浦氏はPARCOが出版していたマーケティング誌『アクロス』の編集長をしていたらしく,だからこそ「第四の山手」とか「ファスト風土化」などとくだらない発想で,あたかもそれが現実を説明しているかのように流布してしまうのだ。私などは感情的になって,(そもそも読書としてそんなものが楽しめるはずがないのだが)彼の著作などとても読めないが,若林氏はあくまでも研究対象の一つとして読み込んでいる。その辺りはさすがであり,そういうことができない私はなかなか多くの人を納得させる研究ができないんだろうな,と反省。しかも,地理学者の業績まで引き出してくるところは彼らしい。
しかし,新書という形をとっているが故に,本書はゆるい部分もある。あとがきで,本書は「私論」であると言い切っているように,町田市で生まれ育ち,つくばエクスプレスが開業し,郊外化した筑波大学に長年勤めていて,現在は流山市に住んでいるという。彼は郊外の問題を上から目線で批判したり,逆に他人事のように賞揚したりするのではなく,自分ごととして捉える。まあ,その辺は東京都心から50km圏で,東京23区内に通勤する父親のもとで20歳まで育った私にとって本書が魅力的なところである。しかし,全般的には,相変わらず著者の器用さが故に物足りなさを感じもする。
まあ,でも郊外の問題はいまさらどっぷり深く突き詰めるものでもないので,この軽い本一冊でかたをつけてしまいましょう,という感じだろうか。

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