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『ユリイカ』特集「ボルヘス」

『ユリイカ[詩と批評]』1999年9月号(第31巻第10号)特集「ボルヘス生誕100周年記念特集」,青土社,277p.,1238円.

これは雑誌であって,単行本ではないが,まとめて読んだので,こういう形で紹介しておこう。ボルヘスの本を私は何冊持っているだろう。
『不死の人』白水uブックス(1996年)
『ブロディーの報告書』白水uブックス(1984年)
『砂の本』集英社(1980年)
『伝奇集』岩波文庫(鼓 直訳,1993年)
『伝奇集』集英社(篠田一士訳,1975年)
『七つの夜』みすず書房(1997年)
『悪党列伝』晶文社(1976年)
『パラケルススの薔薇』国書刊行会バベルの図書館(1990年)
『永遠の歴史』筑摩叢書(1986年)
上2つの白水uブックスがとても面白くて少しずつ集めようと思ったのだが,それ以降はなかなか面白いと思えないでいる。でも,現在進行中の研究上,ボルヘスの「バベルの図書館」という発想は無視することができないので,とりあえず,ボルヘスが書いたものを一通り読む前に,ボルヘスに伝かかれたものを読んでみようと,『ユリイカ』という批評雑誌に手を出した。
ちなみに,「生誕100周年」ということで分かるように,ボルヘスはアルゼンチンで20世紀を生きた作家である。書店では通常「幻想文学」のコーナーに入れられる。確かに彼の作品を表現するのにこの言葉は適切だが,実際にこのコーナーに並べられた書物をみてみると首を傾げたくなる。そう,日本ではもっぱら幻想文学というとファンタジーものの暗いほうのもの,場合によってはホラーまがいのものが含まれる。つまり,幻想とはポピュラーなファンタジーがそうであるように,現実逃避による非現実性。確かに,ボルヘスの作品はそれらと類似した独自な世界観がある。しかし,その幻想性は現実逃避ではなく,表層的な事実では捉えきれない現実の真実を捉えるべきときには事実と反する非現実が表現されるのだ。
なんて,偉そうなことはかけなくはないけど,私はボルヘスの世界を十分理解しきれていない。彼は高齢で作品を次々と世に出し,しかもアルゼンチンの国立図書館の館長をしながら,しかもほとんど視力を失って。そして,彼は短編しか書かない。しかも,時には存在するかどうか分からない出典からの引用でありそうでなさそうな話をでっち上げる。私がどっちを先に読んだかは忘れてしまったが,ボルヘスを読むと,芥川龍之介の作品世界を思い出す。といっても,こちらも十分に読んだわけではないのだが。日本にはそういう優れた文学作品があるのに,彼の名を関した文学賞はもっぱらベストセラーのセールスポイントに利用されているにすぎない。
この特集のなかでも,特に気にいった文章を列挙しておこう。
ウンベルト・エーコ「ラ・マンチャとバベルの間」
室井光広「現代文学とボルヘス――あるいはボルヘス付[憑]きの現代文学」
谷川 渥「ボルヘスの地図」
芳川泰久「列挙と代替――世界の大きさを充たす小さなフィクション」
ボルヘスの翻訳もしている野谷文昭氏と高山 宏氏の対談も好き勝手いっていて面白い。

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