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創刊の社会史

難波功士 2009. 『創刊の社会史』筑摩書房,254p.,760円.

ちくま新書の1冊。読み終わって,巻末の「好評既刊」を見たら,赤川 学,吉見俊哉,内田隆三,若林幹夫,と東大社会学出身の研究者が立て続けに書いていることに気づく。私はあまり新書を買わない。やはり,基本的に新書は研究者が読んで面白いようなものは滅多にないからだ。なので,新刊チェックはしていないけど,本書はたまたま近所の図書館で,出版社が発行している,半分新刊案内を含んだ,でもフリーペーパーではなく,50円とかで売っている(だけど図書館などには寄贈される)小冊子に難波さんの小文が載っていて,本書の出版後記みたいなものがあり,知った。
難波功士さんは大学卒業後,広告代理店に就職し,暫くして休職して東大大学院の社会学に入学した。そしてそのまま研究者の道に入って,広告や雑誌の研究をしている,現在は関西学院大学の教授。
もちろん,彼の著書や論文をいくつか読んでいる私だが,前著の『族の系譜学』の前身となる文章を自分の大学の紀要に書いていて,マガジンハウス女性誌の分析のなかで,私の論文が2本ほど言及されていて,少し親近感を持った。結局,この紀要の論文があまり面白くなかったために,『族の系譜学』はまだ購入していないが,ちくま新書なら気軽に読めるし,安価なので新刊で買うことにした。もちろん,私も雑誌には興味があるし。一応,「若者向けのファッション誌・ライフスタイル誌を中心に,雑誌の栄枯盛衰の流れを概観してきた」とあるような限定つきで,日本の雑誌の創刊号について,1970年代から今日までを辿るという趣旨だ。
まあ,私も『Hanako』の研究をしているくらいだから,それなりの雑誌好きで,男性という自らの性差が故に,気軽に女性誌を見られないという制約のなかで,時折美容室で読んだり,大人になって付き合った女性の恋人の雑誌をゆっくり読んだりと,男性誌よりも女性誌に関心を持っていた私。もちろん,高校生の頃からファッションに興味を持ち出して,『Men's non-no』を何度か買っていた私は風間トヲルや阿部 寛,そしてこの雑誌のモデルから始まった大沢たかおや田辺誠一,あるいはglobeのマーク・パンサーなども雑誌でよく見ていたし。なので,本書が提示する雑誌に関する情報にはそれなりに楽しませてもらった。今日まで長い間続いている雑誌が創刊当時はとんでもない雑誌だったとか,出版同士誌の関係,親子雑誌や姉妹雑誌,などの系譜。最近は普通の男性でもてっぺんを盛り上げた奇妙な髪型をしていると思ったら,女性のギャルに続いて,男性のホスト的スタイルが雑誌などを通じて一般的になっていること。そして,普段表紙を見かけるだけで嫌悪感を抱いてしまうような雑誌の詳細まで。
まあ,確かに新書という形式ではそれほど難解な学術的含意を組み入れるのは望まれない。しかし,本書は圧倒的に雑誌の評論家的コメントに終始してしまい,これらの社会史(アナール学派的な歴史学的な含意を期待させるこのタイトルもどうだろうか)を通じて結局何が分かり何が主張したいのかということについても,「おわりに」に申し訳程度に加えられている程度だ。まあ,ともかく研究者としては物足りない一冊。新書でも,吉見俊哉や多木浩二は適所に学術的・批評的記述を織り交ぜている。
まあ,40歳間近になってまだ1冊も本を書いていない私は何も批判する権利をもっていないし,それなりに出版者的な事情も分かっているつもりだが,素直な感想をこうした半公的な場で公表しておくことも大事だと思う(少なくとも地理学雑誌に本書の書評を載せるのは難しいだろうから)。

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