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西欧中世の自然経済と貨幣経済

マルク・ブロック著,森本芳樹訳 1982. 『西欧中世の自然経済と貨幣経済』創文社,143p.,1800円.

創文社の歴史学叢書は4冊目。
ヨハン・ホイジンガ『レンブラントの世紀』(1968年)
リュシアン・フェーブル『歴史のための闘い』(1977年)
リュシアン・フェーブル『フランス・ルネサンスの文明』(1981年)
その装丁の,簡素だがセンスがいいところと,程よく薄くて読みやすいところが気に入っている。でも,歴史なんてものはそのいわば「厚い記述」が重要であって,この叢書からしっかり学んだことは多くない。
さて,マルク・ブロックはご存知の通り,フェーブルとともにフランスの新しい歴史学,アナール学派の立役者である。まだ読んでいないが,『封建社会』を記した彼による中世論だったら安心できると思い,古書店で見つけて購入した。本書には2編の論文が訳出されている。1つが「自然経済か,貨幣経済か。二者択一図式の陥穽」であり,2つめが「中世における金の問題」である。
私は大学の講義でヨーロッパの歴史的な話をしているが,中世という時代には全く疎い。古代に関してはプラトン全集やアリストテレス全集が面白くて,その話をするだけで十分だし,ルネサンス以降はいくらでも面白い歴史書がある。しかし,中世という時代はいわゆる封建時代として安定したキリスト教的世界と教わっているために魅力的にも思えないし,どの辺から本を読めば良いのか分からない。まあ,本当ならばブロックの『封建社会』から読むべきだが,なかなか古書でも安価で売っていない2冊本を手に入れるのを躊躇してしまう。
また,一方で貨幣制度の問題については中世といわず,全く知識のない状況だ。偉そうに資本主義の起源みたいなことをさらっと話しているのに,そこに至るまでの歴史的経緯を何もわかっていないのが実情だ。ということで,中世の話でも,これだけ限定されれば頭に入ると思った。本書は2編の論文を訳出するだけでは薄すぎたせいか,丁寧に訳者による「西欧中世貨幣制度概観」という文章までつけてくれていて,とても役に立つ。でも,あとがきは少し冗長すぎるような気もする。ブロックの文章の読後に他の文章を読むとなんだかなあ,という気もする。しかも,ブロックがそれぞれ1939年と1933年に書いたこの2つの論文からこのテーマに関しては急速に研究が進み,考古学的な資料も数多く発見され,ブロックの主張の多くが覆されたというのだ。まあ,それはしょうがないが,読後にそんなこといわれてもねえ。
まあ,とにかくブロックがいうにはヨーロッパにおける経済制度は単線的な発展史観では捉えがたい複雑さがあった,ということらしい。ちなみに2つめの論文は「かね」ではなく,「きん」について。といっても,全くもっての金ではなく,貨幣に用いられる金について。現代では紙幣の方が硬貨よりも高価なものになっていますが,紙幣のない時代,特に貨幣経済が当たり前でない時代には硬貨そのものに希少金属が使用されて,それ自体が商品的価値を持っていたということ。要するに,金の含有量とか金ではなく銀とか,それが直接貨幣価値と結びついていたということ。また,金がどんどんヨーロッパでは産出できなくなり,貨幣に金が使われなくなるとか,ヨーロッパ近隣の貨幣を溶かして金を取り出すとか,まあそんなことをしていたらしい。などなど,面白い史実をしることができます。

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コメント

はじめておじゃましたものです。
コールドマウンテンという小説を読んで、貨幣経済の崩壊に興味を持ちました。いろいろな事情で貨幣が使えなくなったとき、人々はどう対処したか?どんなものが貨幣に取って代わったのか・・・・・・そういうことが知りたくなって図書館で漁ってみたのですが、適当な資料が見つからないのです。漁る過程で、ブロック先生の著書にも行き当たりました。自然経済という言い方は初めてききました・・・・・・。
これからものぞかせてください。わたしは、好奇心が強いだけの素人ですが。

投稿: だぶるえんだー | 2013年6月26日 (水) 16時00分

だぶるえんだーさま

随分古い記事に書き込みをありがとうございます。
偉そうにこの本についてblog記事など書いていますが,この本は私にはかなり難しかったです。
『コールドマウンテン』は映画化された作品ですかね。
でも,貨幣経済の崩壊なんてあったっけなあと思うので,他の作品でしょうか。
まあ,こんなblogですが,よろしければ読んでやってください。

投稿: ナルセ | 2013年6月26日 (水) 22時02分

「コールドマウンテン」
地味ですが、良い作品です。気が向いたら読んでみてください。悲しいことに、もう新品では買えないのですが・・・・・・

投稿: だぶるえんだー | 2013年6月27日 (木) 21時35分

だぶるえんだーさま

ちょっとAmazonで調べてみましたが,『コールドマウンテン』で出てくるのはやはり映画化されたもので、チャールズ・フレイジャーという人の作品でした。
映画は観たのですが,内容はあまり覚えていません。やはり小説で読んだ方が良い作品なのかも知れませんね。

投稿: ナルセ | 2013年6月28日 (金) 19時22分

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