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10日前の日記

4月26日(日)

昨年急死してしまった映画監督市川 準氏が残したプライヴェートフィルムが公開されている。朝と夜にしか上映していないので、日曜日なのに朝から渋谷に行く。

渋谷ユーロスペース 『buy a suitスーツを買う』
プライヴェートフィルムというが、きちんとした脚本がある。大阪に住むある女性が初めて上京する。5年間音信不通だった兄を探すために、以前親しかった男性を訪ねるところから映画は始まる。頼りは突然送られてきたハガキ一枚。それをその兄の友人に見せ、秋葉原から上野に行き、そこからバスに乗って浅草まで。ハガキに書かれた住所は「吾妻橋脇」。なんのことやら分からずにとりあえず、橋の袂で佇む妹。映像には多くのダンボールハウスが写されます。その一つから出てきた男が兄だった。兄の友人の話によると、兄は昔から頭がよく、この友人とは大学の数学科の先輩後輩だったとのこと。小さい頃から勉強で困ったことはなく、何でも考えれば答えは出ると思っていた。それが社会に出て、さまざまな理不尽なことに出会い、ついていけなくなったらしい。その行き着く果てがダンボール生活だ。彼が行方不明になる前までは、恋人と一緒に暮らしていた。で、その恋人は今、浅草でスナック経営をしているという。
この1枚のハガキはある思惑があったようだ。妹を上京させ、一緒に彼女に会いに行くというストーリー。思惑はうまくいき、ちょうど彼女の誕生日に会うことができる。しかし、やり直したいという申し出も断られ、驚きの結末へ。プライヴェートというのは、前編小型デジタルカメラによる撮影だということ。もちろん、音もそのまま録音され、雑音が大きい。ただ、やはりそんなフィルムでも脚本や演出は市川氏的なものだといえる。
以前、私は『トニー滝谷』のことを、素晴らしいが箱庭のような潔癖さがあり、それがある意味でリアリティさを減じていると書いた。しかし、その後彼の作品は似たような潔癖さは保ちながらも、死と真摯に向き合う『あおげばとおとし』から、女子中学生の捻じ曲がった人間関係を描く『あしたのわたしの作り方』と、私の批判など軽く乗り越えていく素晴らしい作品を世に出してきたが、最期にたどり着いたのは、社会から自ら堕落していく偏屈な若者の姿。この作品がきちんとした撮影で撮られなかったというのも、この作品の持ち味を高めているようにも思う。

この日は最終的に代官山でのライヴがあった。一度帰宅するか、ずーっと渋谷で過ごすか。結局、ライヴがスタンディングだったので、じゃあ徹底的に座ってやろうということで、さらに2本の映画を観ることにした。次の映画は12時からだったので、またまた人間関係でランチ。最近は休日でも6時くらいに起きているので、ランチが混みだす12時前に食べてもお腹の方はまったく問題なし。空いている店内で悠々とランチしています。

渋谷シネマライズ 『ウェディング・ベルを鳴らせ!
『アンダーグラウンド』のエミール・クストリッツァ監督の最新作。彼の作品はとても面白いのだが,観るのにとても体力がいる。底抜けに陽気な音楽と老人俳優でも驚くべきオーバーアクション。意味不明な細部やハチャメチャなストーリー展開。でも,笑いだけでなく,そのなかに政治的な風刺と人間性の本質を突くというメッセージ性。でも,もちろんそれは押し付けがましくない。でも,映像そのものは極めて押し付けがましいのだ。まあ,ともかく遠藤賢司のコンサートのように,そのエネルギーを避けてはならず,受け止めなくてはならない。ともかく,観る者の強さが問われる作品だ。しかし,その中心にあるのは「愛」。本作は主人公が9歳の少年。そのせいか,随分観やすい内容になっている。田舎で祖父と2人で住む少年。祖父は自分の命がこの先長くないことを悟り(といっても,極めて生命力に溢れたじじいなのだが),少年にいくつかのことを託す。都会に行ってそれらを手にしてから戻って来いというのだ。飼っている牛を連れて,それを売ったお金でお土産と,イコンを買う。そして,自分のお嫁さんを連れて来いという。ということで,中盤は都会でのすったもんだ。この少年がラッセル・クロウにそっくりなのが笑える。そして,少年が一目惚れしてお嫁さんに選ばれる少女ヤスナを演じるマリヤ・ペトロニイェヴィッチという子がめちゃくちゃきれいなのだ。この辺りはさすがクストリッツァ監督。まあ,ともかく思ったよりもストーリーもハチャメチャではなく,良いお話です。当然,『アンダーグラウンド』以降,クストリッツァ監督作品に欠かせないミキ・マノイロヴィッチも出演しているし,素晴らしい作品です。

渋谷文化村ル・シネマ 『レイチェルの結婚
続いて観たのは,『パッセンジャーズ』に続いて,アナ・ハサウェイ主演作品。この作品ではアカデミー賞主演女優賞にノミネートされ,その体当たりな演技が評価されたようです。『パッセンジャーズ』の時に書いたが,美形な外見のゆえに,清潔な役どころが多い彼女が今回演じるのは,薬漬けで施設から退所したばかりの女性。タイトルのレイチェルとはアン演じるキムの姉。姉の結婚式に9ヶ月ぶりに帰宅した彼女を迎える家族との数日間の物語。結婚相手が黒人のミュージシャンということで,自宅で手作りのウェディングパーティはさまざまな人が集まる。もちろん,こういう場にはアジア系とゲイが欠かせません。それをどう評価すべきかは私には分かりませんが,最近のアメリカ映画はそういうことになっています。ちなみに,レイチェルたちの両親は離婚しているが,この時にはお互い別のパートナーを伴っていながら再開する。この美しい母親を演じるのはなんとデブラ・ウィンガー。1980年代前半に活躍した彼女を直接私は知らないが,1995年を期にスクリーンから去ってしまった彼女の消息を辿るドキュメンタリー『デブラ・ウィンガーを探して』でなぜかその存在はよく知っている。そして,監督は『羊たちの沈黙』のジョナサン・デミ。
かなりドキュメンタリータッチの作品です。ハンディカメラを使った長まわしの多い撮影。まあ,アナ・ハサウェイはこれまでにない汚れ役ということですが,ある意味では薬の後遺症か躁と鬱を繰り返す役どころはふっきれればやりやすいのかもしれない。でも,他にもさほど有名な俳優は出演していないなかで,いいたいことをいい続けていつまでたっても歩み寄らない家族を描くこの作品はなかなか面白い。そこに溶け込んでいるアンの演技も評価できると思う。

代官山LOOP 一十三十一
渋谷から歩いて代官山まで。代官山ということで,UNITだと勝手に勘違いしていて,新しく代官山にもできたLOOPの位置は確認してこなかった。でも,渋谷から旧山手通りを南下してきたのが功を奏して,あっけなく発見。後から合流することになっている恋人の留守番電話に位置の説明を吹き込む。私の整理番号は70番台だったけど,2列目を確保。思ったよりも大きくはないですね。UNITと比べるとかなり小さいですが,青山のLOOPと比べると大きい。基本的にスタンディングなのに,ドリンクはグラスを使います。開場から開演まで1時間。見覚えのあるファンたちは早い時間から集まっていますが,なかなか満員にはならない。そのおかげで開演20分前くらいに到着した恋人も人の隙間をぬって,私のところまでやってきた。この日のバンドメンバーはチェックしてなかったけど,いつもどおりの4人でした。ベースは南條レオ,ドラムスは田中慶一,キーボードは滝沢スミレ,そしてサックスの後関好宏。久し振りの一十三十一ちゃん。一時期多忙だった時のよりも1年間充電して,といっても出産と育児をやっているわけですが,肌のはりや肉付きもちょうど良い感じ(太ったわけではない)。復帰第一弾でいきなり2デイズなんて大丈夫かと思ったが,前半はなかなか良い感じで声も出ていました。バンドメンバーは同じでしたが,アレンジもけっこう変えていてさすがです。ステージ向かって右寄りの私の位置からはスミレ嬢の姿はあまり見られませんでしたが,なかなかのステージだったのではないでしょうか。さすがに,後半は体力不足感がありましたが,歌詞忘れも含めてご愛嬌ということで。6月には同じLOOPでRir fuとの2組ライヴがあるとのこと。楽しみです。

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