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黒猫・アッシャー家の崩壊

エドガー・アラン・ポー著,巽 孝之訳 2009. 『黒猫・アッシャー家の崩壊 ポー短編集Ⅰゴシック編』新潮社,207p.,362円.

新潮文庫が「海外名作新訳コレクション」と題し,さまざまな作品がを新訳で発売している。ちょうどエドガー・アラン・ポーは生誕200周年にあたり,アメリカ文学研究者の巽氏が,ポーの短編を,「ゴシック編」と「ミステリー編」に分けて翻訳している。「モルグ街の殺人」を読みたいところだが,私がスデニ持っている,ボルヘス編『盗まれた手紙』に収録された作品ばかりだったので,とりあえず「ウィリアム・ウィルソン」が収録された「ゴシック編」を購入した。収録されているのは以下の通り。

黒猫(1843年)
赤き死の仮面(1842年)
ライジーア(1838年)
落とし穴と振り子(1842年)
ウィリアム・ウィルソン(1839年)
アッシャー家の崩壊(1839年)

私が「ウィリアム・ウィルソン」を読みたかったのは,現在研究中のポール・オースター『ガラスの街』の主人公,ダニエル・クィンのペンネームがウィリアム・ウィルソンというからだ。米国のユダヤ人作家であるオースターはポーから多大な影響を受けている。ポーのデュパンシリーズの舞台はフランスだし,「群集の人」の舞台はロンドン。米国作家であるポーが注目されたのはフランスのボードレールが翻訳・紹介してからであるように,ポーはフランスと関係が深いし,ポーの作品自体,非常にヨーロッパ的雰囲気を持っている。そして,オースターもフランスに行っていたこともあり,彼の作品にはポー的,ボードレール的雰囲気はプンプンだ。実際,『ガラスの街』でスティルマンという老人がニューヨークの街を徘徊する場面は「群集の人」を思い起こさせ,一見,探偵小説の設定を有するところは,探偵小説の祖であるポーへのオマージュといえる。実際に作品中にはポーの名前も登場し,「盗まれた手紙」からの直接的な引用もある。そして,このウィリアム・ウィルソンという名前はポーの分身物語「ウィリアム・ウィルソン」が明らかに意識されている。
残念ながら,巽さんの文章を読んだことはないけど,読みたい本を書いている人なので,かなり期待したが,やはりポー自身の物語展開が非常に奇抜で一読しただけではよく分からないというのが正直なところ。まあ,「盗まれた手紙」も「群集の人」も一読ですっと頭のなかに入ってくる類の短編ではない。まあ,だからこそ面白いのかもしれないが。しかし,そのことは同時に,ポーの恐るべき想像力に感服するしかない。まさに,ゴシックの名に相応しい,おどろおどろしい世界がそこに拡がっています。小学生の時,学校の図書館で借りて一時期はまってしまった江戸川乱歩シリーズのように。いま考えると,江戸川乱歩という作家も相当のものだと思う。ポーの2つの特徴である,探偵ものとゴシック性とを1つの作品に併せ持ったものを日本で作り上げたのだから。といっても,幼い頃の読書経験が記憶で幻想化しているのかも。乱歩の作品も小学生用に書き換えられたものではなく,ちゃんと読んでみたくなった。

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