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ロマン主義の反逆

ケネス・クラーク著,高階秀爾訳 1988. 『ロマン主義の反逆――ダヴィッドからロダンまで13人の芸術家』小学館,428p.,7000円.

美術史,美術批評の成果はなかなか自身の研究に反映するのが難しいが,好きで時折読んでいる。ケネス・クラークは1903~1983という時代の人で,本書は1973年に出版されたもの。例えば,クラークの『風景画論』などはバージャーの『イメージ』で根本的に批判されているが,かといってクラークの数十年前の膨大な業績が無意味になっているわけではない。むしろ,時代的にも,構造主義批評やポスト構造主義批評,ないしはマルクス主義批評などの難解なものとは違い,素朴ではあるが,刺激のある批評だと思う。ちなみに,本書で取り上げられる13人の芸術家とは以下の通り。
ジャック=ルイ・ダヴィッド
ジャンバティスタ・ピラネージ
フセリ
フランシスコ・ゴヤ
ジャン=オーギュスト・ドミニク・アングル
ウィリアム・ブレイク
ジェリコー
ウジェーヌ・ドラクロワ
ターナー
コンスタブル
ジャン=フランソワ・ミレー
ドガ
ロダン
18世紀後半から19世紀にかけて活躍した13人の芸術家たち。残念ながらこのなかの4人は知らなかったが,むしろ知らない画家の章の方が面白かったりする。「ピラネージとフセリ」の章,ゴヤにブレイクの章でのテーマは狂気である。19世紀の銅版画家の作品を取り上げた気谷 誠『風景画の病跡学』(平凡社)を思い出す。
アングルとターナーについては2章を割いて論じられる。もちろんこうした著名な画家に関する章も十分に面白い。そう,有名な画家といってもその作品を1,2枚知っているだけで,それが前期の作品なのか後記の作品なのか,その画家は生前に認められたのか,死ぬまで描き続けたか,途中で引退したかなど,ほとんど知らないものばかりだ。ちなみに,アングルという写実主義の最たる画家については,社会的な知名度は分からないが小学生高学年の頃から知っていた。一度私の担任にもなったことのある大人の男性の魅力を振りまく宮崎先生というのがいて,生徒の前でけっこういやらしい話をしていたのだが,その一つがアングルによる裸婦像「泉」という作品については何度か話をしてくれたのだ。その細かいところは覚えていないが,アングルという画家の名前だけはしっかりと記憶に刻まれている。
さて,本書はテレビで放映された絵画教室のようなものらしいが,まさにこの辺は英国の教養の深さを思い知らされる。日本のテレビに登場する研究者とはどうしても大衆に迎合するようになってしまう。でも,そういう教科書的な内容に「ロマン主義の反逆」と大胆なタイトルをつけ,本書では古典主義とロマン主義とが登場する。前者については分かりやすいが,やはりロマン主義ってのが絵画の分野ではイマイチ理解しがたい。まあ,タイトルにこだわらずとも十分に楽しめるけどね。

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