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メタファー思考

瀬戸賢一 1995. 『メタファー思考――意味と認識のしくみ』講談社,210p.,650円.

一応,メタファー=隠喩も研究テーマの一つにしている私。まあ,メタファーに限らず言語表現について,地理学のできる範囲では考えていきたいと思っているが,日本人によるこの手の本は今まで読んでいなかった。本書の著者の瀬戸賢一さんは『空間のレトリック』(海鳴社,1995)という本も出版されていて,『レトリック感覚』や『レトリック認識』を書いている佐藤信夫さんと並んで,言語学を専門としない地理学者には読むべき存在だと思う。
しかし,私はポール・リクールの『生きた隠喩』とかデリダの論文とか,難しいところに手を出して,これらの恐らく分かりやすく書かれているだろう著書には触手が伸びない。これはあくまでも好みの問題と,食わず嫌いな問題だ。でも,先日祐天寺margoのイヴェントの前に立ち寄った,隣の古書店で,この講談社現代新書に入っている本書が100円で売っていた。この日は荷物を軽くするために,本を持参していなかったし,この位軽い本だったら買ってもいいかなと思ったり,3章構成の1章が「空間のメタファー」にあてられていたので,買ってみることにした。しかし,この食わず嫌いはそれなりに正しかったようだ。普通だったらこの厚さだったら1日ちょっとあれば読めるのに,この本は3,4日かかってしまった。確かに,日本語と英語を使って,豊富な事例を語源とともに提示する,非常に説得的な本だし,かといって論理的な誤りも犯していない。字義通りの意味を無批判に仮定して,その上でメタファーを二次的な意味と主張するわけではなく,でもだからといってリクールやデリダほど懐疑主義者にはならないような,前提を自らに課しているだけだ。私にとって本書が読みにくい一つの原因は,新書というスタイルにあるのは確かだ。本書ではしつこく本文中に文献を示すのは避け,参考文献を巻末にまとめている。だから,議論をしているというよりも,解説しているという雰囲気で,読者と一緒に考えるのではなく,読者を説き伏せるような書きっぷりがやはり私には苦手である。
一緒にしてしまうのは失礼だが,やはり佐藤信夫さんの本も読まないんだろうな。

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