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リウスのパレスチナ問題入門

エドワルド・デル・リウス著,山崎カヲル訳 2001. 『新版 リウスのパレスチナ問題入門』第三書館、115p.,1000円.

リウスはメキシコの漫画家。本書は第三書館から出版されたが、私は晶文社による「リウスの現代思想入門」を3冊持っている。『フェミニズム』と『資本主義とは何だろうか?』、そして『チェ・ゲバラ』。ラテンアメリカは長い間アメリカ合衆国に虐げられてきて、反米的思想家が多いのかもしれない。アリエル・ドルフマンという思想家の著書『ドナルドダッグを読む』(マトゥラールとの共著)と『子どものメディアを読む』も晶文社が翻訳を出していて、『ドナルドダッグを読む』は山崎カヲル氏の翻訳だ。その思想的立場にはマルクス主義が大きく関っているが、リウスの『資本主義とは何だろうか?』も山崎氏の翻訳。山崎カヲル氏は私が非常勤講師で通っている東京経済大学の教授だが、まだ一度もお会いしたことがない。私自身は私の論文を読んで面白いと思ってくれた学生には気軽に連絡を取ってきてほしいと願っているが、自分が尊敬する研究者にはおいそれと連絡を取ることができない。その人の著作を読み込んでいれば質問とかもできるものだが、そういう人に限って著作が多く、とても全部は読みきれないのだ。
まあ、そんな個人的なことは置いておいて、最近サイードの『パレスチナ問題』をようやく購入したので、その事前勉強として読むことにした。もちろん、リウスは漫画家だから、漫画である。日本でもよく、学校で学ぶような歴史や社会問題を漫画で分かりやすくという試みはある。それらをきちんと読んだことはないが、大抵はきちんと登場人物が出てきて、物語的な内容に脚色されたものだと思う。しかし、本書は違う。イラストと写真と文章の貼りあわせから構成されたコラージュだ。だから、イラストや写真は参考程度で、結局は文章を読むことになるのだが、その文章も手書き。でも、決して文字数にして多くないその文章による説明が端的にテーマに関る事項をまとめていて、分かりやすい。
パレスチナ問題。私は1970年生まれだが、正直いって大学院に入学するまで「パレスチナ」という言葉すらろくに知らなかった。本書の出版社である第三書館が「おわりに パレスチナ問題は私たちの問題になった」という2ページの文章を寄せているが、それを読んで私の無知は恥ずかしいものではなくなったような気もする。つまり私が幼い頃から続いていたイラン・イラク戦争やクウェート、湾岸の石油に関る問題などは、全て「アラブ世界」の問題として一括りにされ、どこか遠くの世界の出来事とされてきたのだ。第二次世界大戦下のナチスによるユダヤ人迫害のことは詳しく学んだくせに、そこから生じる現代まで起こっている問題についてはろくに教わった記憶はない。サイードを読むようになって少しずつ関心を示し、最近ではいくつかのドキュメンタリー映画で現実味を持って理解するようになってきた。もちろん、テレビのニュースでは昔からアラファトPLO議長は出ていたし、最近ではパレスチナ人による自爆テロなどのニュースが伝えられる。しかし、根本のそのパレスチナ問題とは何かを教えてくれる場には出会わなかった。果たして大人たちにとっては周知のことだったのだろうか。
本書から学ぶことは非常に多かった。私は浅はかな理解では、歴史的に長く迫害されていたユダヤ人が、第二次世界大戦で決定的にその存在を危機にさらされ、戦後彼らのための国家を樹立するためにアメリカ合衆国が協力してイスラエルという国家を作ったということ。当然そこに以前から住んでいたパレスチナ人たちが今度は迫害されるようになる。しかも、そのやり方は非常に暴力的で、いまだに暴力のやり取りが続いている。その程度の理解だ。しかし、そもそものユダヤ人のための国家作りという発想は古代の神話に基づいているということ、その実現にはアメリカ合衆国の前に英国が主導していたということ。その背後には潤沢な資金源としてのユダヤ人資産家がいて、それは欧米の国家のあり方に大きく圧力をかけていること。もちろん、その政治力と資金源は現在の暴力の応酬にも直接的に関っていること。まあ、本書に書かれていること全てを鵜呑みにするのはどうかとも思うが、ともかくサイードの『パレスチナ問題』を読む前に、本書を読んだのは非常によかったと思う。
いやいや、改めて世界は広く、問題は山積みだと思い知らされる。

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