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封建社会

マルク・ブロック著,新村 猛・森岡敬一郎・大高順雄・神沢栄三訳 1973, 1977. 『封建社会 1, 2』みすず書房,260+184p.,2266+2884円.

大学院に入学した頃からのにわか歴史ファンの私。しかし,一方では高校まで世界史もそんなに好きじゃないし,日本史にかけては嫌いな部類。まあ,とにかく基礎知識が少ないわけです。大学院を通じて好きで詠み続けていた歴史的な話題を,大胆にも非常勤先の大学で教えることにして早9年目。基本的に私の歴史的な関心はヨーロッパのルネッサンス以降にあったわけだが,大学で教えるようになって,旧約聖書やプラトン,アリストテレスも読むようになったものの,古代と近代の中間,すなわち「中世」という長い歴史に関する知識があまりにも欠けていたので,どうにかしたかった。そんな時に知ったのが本書。古書店には結構上下巻揃って置いてあったのだ。でも,上下巻揃えて買うと結構な値段になるし,重たい荷物にもなる,という適当な理由をつけて,本当のところは読むのが面倒だっただけだ。しかし,覚悟を決めて読むことにした。
しかし,やはりそう甘いものではなかった。マルク・ブロックのことは当然知っていた。フランスでリュシアン・フェーヴルとともに,アナール学派の創始者といわれる人物であり,また『フランス農村史の基本性格』(1931)は当時のフランス地理学にも多大な影響を与えたという。この本も翻訳が出ていて,それを幸運にも入手したのだが,彼の遺作といわれる『歴史のための弁明』も読んだが,どうにもブロックの文章は難解なわけではないのに,頭に入ってこない。
さて,中世=封建社会,という私の短絡的な理解ももちろん問題だ。そして,浅はかな私は,未だに講義で,中世という時代はヨーロッパの歴史のなかでも比較的安定していた長い時代で,みたいなことをいって,キリスト教と封建制度で特徴付けられます,などと恥ずかしながら説明している。まさに,そんな私をあざ笑うかのように,その単純な理解をより複雑化しようというようなのが本書なのかもしれない。1940年に出版され,その後まもなく戦争中に殺害されてしまうブロック。本書は日本語版も2冊になっているように,1巻と2巻は内容的にも大きく分かれる。第一巻は「従属の紐帯の形成」と題される。「紐帯」とは聞き慣れない言葉だが,私は社会学者が使っているのでその意味合いを知った。人々の結びつきのことで,英語でいうところのbondだ。また,第一巻で本文中に目に付いた言葉は「オマージュ」。私たちはけっこうこのフランス語を用いる。特に芸術的な表現において。私もポール・オースターの『ガラスの街』がある意味において,ポーの『群集の人』へのオマージュである,と書いたように「賛辞」のような意味合いで感嘆に使っているが,そもそもフランス語のhommageのhommeは人間=男のことだ。
第二巻は「階級と統治」と題される。より政治的・制度的な側面に議論は移行する。ここでも,私の貴族に関する理解は根底から覆される。そして,聖職者や裁判の話。最後の方に国家の話があり,最後の「社会形態としての封建制とその影響」ではかなり分かりやすく封建社会についてまとめてくれている。でも,その一つの結論は,封建制といっても広いヨーロッパの諸地方でも異なるし,長い中世という時代のなかでも異なる。もちろん,それは同じような順番で推移するものでもない。と,理解は難しいものなのだ,と開き直ってしまったら,それはそれでなんのために読んだんだってことになってしまう。ああ,歴史は奥が深い...

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