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近代世界システム1

イマニュエル・ウォーラーステイン著,川北 稔訳 1981. 『近代世界システム――農業資本主義と「ヨーロッパ世界経済」の成立Ⅰ,Ⅱ』岩波書店,250+298p.,2170+1900円.

私は一時期,ウォーラーステインの著作にはまったことがあった。それは,1996年に卒論の一部であった女性雑誌『Hanako』に関する論文を『地理科学』に掲載する際に,社会学者のピーター・バーガーの議論を参考したことに発する。バーガーの議論はマルクス主義的な商品論を土台としていて,ルカーチ『歴史と階級意識』より分かりやすく,物象化に関する議論を展開していたのだ。当時,私は「場所の商品論」なる議論を展開していて,より理論的な根拠付けを必要としていたのだ。そんな時に,「万物の商品化」という章を含むウォーラーステイン『史的システムとしての資本主義』を読んだ。ウォーラーステインの名前は知っていたものの,どれも分量のある本ばかりでどこから手をつければという感じだったが,岩波現代選書に収められた『史的システムとしての資本主義』は非常に薄く,しかしながら十分に刺激と知識を得られるものだった。
その論文をとりあえず片付けた後に,なぜか私は修士論文でグローバル化の問題を扱うようになり,思い切って当時新刊として翻訳された『脱=社会科学』を読んでみたのだ。その本は本当に面白かった。ウォーラーステインが議論の基礎としているマルクス,およびブローデルの話が世界システム論との関連で詳しく説明され,しかも最先端のシステム論として,新たに自然科学の分野での複雑系の議論を組み込んだものだった。次いで,原題を「geopolitics and geoculture」という『ポスト・アメリカ』については,当時地政学研究もかじっていたこともあって,書評まで書いた。ちょうどその頃,やはりウォーラーステイン理論の発端である『近代世界システム』もそのうち読まなきゃと思い,原著の1巻が岩波現代選書として2巻本で出版されていたのだが,古書店でみつけた2巻目を購入して持っていた。しかし,2巻だけ1冊で購入したのがよくなかった。古書店では基本的に2冊セットでおいてあったし,バラで売っていたものを喜び勇んで購入したら同じ2巻だったってこともあった。ようやく,最近Amazonのマーケットプレイスを思い出して購入した次第。でも,今となっては自分の研究に直接役立てるというよりは,講義で話をしているヨーロッパの歴史への基礎的知識を得ることを求めて読み始めた。
ウォーラーステイン議論が,既存の歴史学的実証研究を土台としているのは知っていたが,ここまで引用が多く,ところによっては引用の組み合わせで成り立っているようなものだったことには少し驚いた。そして,訳者の解説にも書いてあったが,ブローデルからの引用の多さ。確かに,世界システム論自体はマクロな視点からしか成立しないようなものだが,本書の具体的な記述は非常に細かい。といっても,原著には引用ミスなどが非常に多く見られるらしいが。しかも,もちろん彼が参照している具体的研究は専門的な歴史研究が多いので,登場する史実は私のような歴史に疎い読者には馴染みのないものが多く,それらをうまく記憶し,頭のなかで構成するのが難しい。そして,思ったよりもその「近代世界システム」という枠組みが明確ではない。確かに,私が読んだ彼の著作の20年前に本書は書かれているので,彼のシステム論自体が進化しているのだろう。そういう意味では,本書の時点での彼のシステム論がどのようなものだったのか,そんなところに興味がないでもない。
本書を第1巻とする「近代世界システム」シリーズは当初4巻本として想定されていたものの,実際には予定していた構成とは異なってきて,現在まだ3巻までしか出ていないらしい。でも,名古屋大学出版会から2巻,3巻ともに翻訳が出ているので,また少しずつ読んでみたいと思う。そして,同時に本書にも何度も登場するブローデルの『地中海』も読める日が来るといいなあ。

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