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地図出版の四百年

京都大学大学院文学研究科地理学教室・京都大学総合博物館 2007. 『地図出版の四百年――京都・日本・世界』ナカニシヤ出版,133p.,2940円.

本書は京都大学総合博物館2007年春季企画展に合わせて制作されたものであり,京都大学の地理学教室(日本最古の地理学教室だ)と総合博物館,および付属図書館などに所蔵された地図を一堂に集めた展示会のカタログも兼ねていると思う。もちろん,その作業には多くの人の手がかかっていると思うが,それに文章を執筆したのは金田章裕氏と上杉和央氏。金田氏はまさに京都大学地理学教室の顔であり,最近退官されたらしい。一方で,上杉氏は私と同世代の若い研究者。彼が本書を送ってくれたのだ。
正直いって,地理学者が作る地図の本はあまり面白くないのが常だ。江戸時代の地図については,山下和正 1996. 『江戸時代の古地図をめぐる』NTT出版,が十分に楽しませてくれる。ちなみに,山下氏は建築家。しかし,本書は非常に面白かった。日本で出版された地図に限定していたので,テーマが絞れているし,副題にあるように,蒐集された地図も,京都図,日本図,世界図に限定している。3つもあるのは多すぎるかもしれないが,私のような地図の専門家でない読者にとってはこのくらいのヴァラエティはちょうど良いと思う。そんな3種類の地図を含むので本書は以下のように,4部構成となっている。

Ⅰ京都図の出版
Ⅱ日本図の出版
Ⅲ世界図の出版
Ⅳ近代地図とアカデミズム

序章とⅠ章は金田氏によるもの。正直いって,京都の地理に詳しくない私にとっては細かい地図の年代特定などはあまり興味がないがそれなりには楽しめた。私のような読者が楽しめたのは,やはりⅡ章以降を上杉氏が書いていることに起因しよう。やはり京都大学の地理学教室は歴史が強く,上杉氏や,やはり同年代の米家泰作氏などは私にはなかなか理解の難しい歴史研究をしているのだが,その先にある含意は私の研究と相通じるものがあるようで,お互いに好意を抱いている。
本書には,京都図,日本図,世界図が含まれているが,これはどれも結局は広義での「世界図」なのだ。長い間日本の中心であった京都。その時代においては,山で囲まれたその地域が京都人にとっての全世界だったに違いない。そして,鎖国の江戸時代。やはり海に囲まれたこの日本が世界の中心であり,全世界であった。そして,もちろんヨーロッパからやってきたマテオ=リッチの世界地図によって,日本でも狭義の世界地図が作成されるわけだが,その前に紹介される,仏教的世界図がとても面白い。曼荼羅という観念的な世界図を持っている,インドを発祥とする仏教だが,それを現実の空間に当てはめた,インドを中心とした世界図が存在するのだ。もちろん,日本で描かれているものにはインドの東の端に日本列島が存在する。もちろん,それは時代的にヨーロッパからやってきた近代的な地図と並存するのだ。
本書は文章だけでなく,地図の印刷や装丁もとてもキレイに仕上がっている。最近はナカニシヤ出版がとても頑張っている。たまには東京にも営業に来てくださいね。

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