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シェイクスピア最後の夢

フランセス・イエイツ著,藤田 実訳 1980. 『シェイクスピア最後の夢』晶文社,256p.,2370円.

前回,イエイツの本を読んだのは,2008年8月で,『薔薇十字の覚醒』だった。イエイツの本でまだ入手していない本はあるが,手元にあって読んでないのはそれが最後だった。その後,新たに入手したのが本書。まだ読んでいないところでは,『16世紀フランスのアカデミー』は新刊でも比較的入手しやすいように思うが,『星の処女神とガリアのヘラクレス』と『エリザベス女王』の2冊は以前新刊で見かけていたのに,最近は古書でもすっかり見かけなくなってしまった。と,今Wikipediaで調べたら,彼女の著書は『ジョルダーノ・ブルーノとヘルメス学の伝統』以外は翻訳されているらしいし,この本も来年工作舎から翻訳出版予定とのこと。
ともかく,この『シェイクスピア最後の夢』はこれまで一度も現物を見たことがなかったのだ。なので,本書を古書店で見つけたときには本当に嬉しかった。しかも,かなり安価で驚いたものだ。こういう発見があるから古書店通いはやめられない。さて,本書のあとがきを読むと,イエイツの出発点には,シェイクスピアの『恋の骨折り損』研究があるらしい。しかし,英国人である彼女はシェイクスピアから距離をとりながら,ルネサンス研究を続けてきた,という。1899年生まれのイエイツだが,本書の出版は1975年。70歳台後半でこんな本が書けるってことが驚き。
さて,本書はイエイツが1974年に行なった4回の連続講義の原稿がもとになっている。そして,最終章として1章を加えたもの。原題は「シェイクスピアの最期の劇」といって,1600年代後半からの『ペクリーズ』,『冬物語』,『シンベリン』,『テンペスト』,そして『ヘンリー八世』の5作品のことを意味する。そして,本書はまさにこの5作品をこの時代に生まれたひとまとまりのものとして捉えようとするもので,副題に「一つの新しいアプローチ」とある。私も東京経済大学の「人文地理学」の講義で『テンペスト』をとりあげて,本橋哲也氏の論文を利用して,この作品が植民地支配という政治的状況と,近代科学とヘルメス的魔術との狭間という哲学的状況とで話をしているが,まさにこうしたシェイクスピア理解を提示したのが本書だったのだ。といっても,本橋氏はイエイツについて言及せず,グリーンブラットやピーター・ヒュームを引いている。まあ,ともかくイエイツはルネサンス期における魔術的哲学をイタリア,フランス,ドイツと研究してきて,ルネサンス後進国であったイギリスに戻ってきて,その大きな影響をシェイクスピア作品に読み取った。
序章はこれまで私も読んできた彼女自身の作品の総括がなされていて,簡潔だがとても面白い。そして,全てが関連してこの本への道筋を導いていることが分かる。しかし,1章はなかなかシェイクスピア作品の話にならず,当時の英国の王朝の歴史が辿られる。それはひとことでいえば「エリザベス朝復興運動」ということになるようだ。エリザベス一世とはもちろんケイト・ブランシェットがはまり役だった映画『エリザベス』であり,また『ブーリン家の姉妹』でナタリー・ポートマン演じるアン・ブーリンの娘でもある。エリザベスの死後,王座を継承したのはジェームズ一世であり,その娘がまたエリザベス。このエリザベスの1613年の婚礼とシェイクスピアとが大きく関係しているというのだ。1章はよって,その後の作品分析の前知識である。
2章は『シンベリン』の,3章が『ヘンリー八世』,4章が『テンペスト』の分析。やはり正直なところは,ちゃんと読んだことのある『テンペスト』の章は面白かったけど,他の章は私の知識不足で十分に楽しめなかった。やはりシェイクスピア作品くらいは読んでおくべきだ。しかも,一度読んだくらいじゃなかなかその研究の理解度は深まらない。

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