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カニバリズム論

中野美千代 1987. 『カニバリズム論』福武書店,288p.,600円.

本書は1972年に『迷宮としての人間』というタイトルで潮出版社から発売されたものの内容を変更して福武文庫のなかに入ったもの。収録されている文章は1963年から1982年までに発表されたものが含まれている。先日紹介した,本橋哲也『ポストコロニアリズム』のコロンブスの話のなかで本書への言及があり,Amazonで調べたらなんと中古で68円だったので買ってみた。それにしても,Amazonの中古本は1円からあるけど,どうなのだろう。買う方は350円余計にかかるが,売る方は発送量も340円支払われるなかから実費で払わなくてはならないし,Amazonへの手数料もある。赤字でも処分したいということだろうか。
中野美千代氏は中国研究者であるが,これまで『奇景の図像学』(角川春樹事務所,1996年)しか読んだことがなかった。ちなみに,本書は「最初の文学的エッセイ」と書かれている。そして,序文を澁澤龍彦氏が書いていて,本文中への言及も含め,この辺の人たちとも交流が深かったようだ。すなわち,その対象は文学であり,その言説のなかに人間の腑の部分を読み取ろうとするところが共通するのだろう。ちなみに,本書には以下のようなタイトルの文章が収められている。

カニバリズム論――その文学的系譜
迷宮としての人間――革命・悪・エロス
食の逆説――開高健氏『最後の晩餐』をめぐって
中国人における血の観念
魔術における中国――仏陀とユートピア
中国残酷物語――マゾヒズムの文化史
虚構と遊戯――中国人の性格について
王国維とその死について――一つの三島由紀夫論のために
恐怖の本質――アンドレーエフ「血笑記」と魯迅「狂人日記」

カニバリズムとは食人のことである。雪山や海上で遭難にあった場合に,先に亡くなった同士の肉体を生き残ったものが延命のために食した,という事実をめぐって賛否両論について論じたり,そこで論じられていないところを突いて,そういう場面にこそ人間の本質が現れる,と論じてみたり。前半はヨーロッパの事例も多く読みやすい。ところが,中国の話になると,ちょっと難しい。平易な文体では書かれているのだが,とにかく私の基礎知識が足りなすぎる。本書には魯迅の話がけっこう出てきて,それだけでも勉強になります。

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