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贅沢なお産

桜沢エリカ 2006. 『贅沢なお産』新潮社,151+αp.,362円.

妻が妊娠してからというもの,わが家にはそれ関係の書籍・雑誌が徐々に増えている。『たまごクラブ』はすでに3冊。その他,書籍2冊に,妊婦用レシピ本,そして本書。私が研究している写真家,田沼武能氏が書いた子育て日記『父の目1000日 赤ちゃん新発見』(ごま書房,1988)なんてものもAmazonで購入。
さて,本書の著者は有名な漫画家。きちんと読んだことはないが,その画風から1963年生まれのバブリーな匂いのする漫画家というのが私の印象。本書を読んでみるとまさにそんな感じなのだが,タイトルどおり,お産に関する本であり,自らの体験談でもある。ちなみに,本書はもともと2001年に飛鳥新社という出版社から単行本で出版されたものが2003年に新潮文庫に入り,その後,手元にある10刷では,その後長女が生まれたときのことの漫画が「贅沢なお産2002」として追加されている。そう,著者は漫画家であるが,本書は全て漫画なわけではない。漫画は5分の1程度で,基本はエッセイである。
DJの恋人と結婚はせずに長い間同棲をしていたエリカさん。その男はある日から急に子どもを欲しがったとのこと。が彼女自身はその気にはならなかったものの,ある日妊娠する。それ以前は妊娠を恐れていたということだが,その時はその事実を素直に受け止め,妊娠・出産モードへと意識も生活も方向転換する。この気持ちはなぜか彼女とは性の違う私もよく分かる。恋人との関係は大事だが,妊娠・出産となると生活が一変し,これまでの延長線上でやろうと思っていたことが難しくなってしまうからだ。しかし,私も今の妻とは,自然に同棲するようになり,彼女が求めていた通り,結婚し,間もなく新しい命を授かった。そして,私自身それを驚くことなく自然な事実として受け止め,それに向かって生活が一変することをむしろ楽しんでいる。
エリカさんはそれ以上のようだ。散々遊び尽くした彼女は,それ以上の刺激を何かに求めていたのだ。そしてたどり着いたのが,妊娠・結婚・出産・育児。そう,それほど劇的に生活が変わるものもないし,やりたくてすぐにできるものでもない。そして,本書が単なる出産体験記ではなく,なんと日本では数%しかいないという自宅出産の記録なのだ。1960年くらいまでは日本で一般的だった出産法が今ではもっともマイナーな方法となっているとのこと。当然,かつては産婆といわれていた助産師の数も限られているらしい。その点,さまざまな方面に顔のきく彼女だから,回りまわって,日本一忙しいという助産師さんに出会い,長男と長女を自宅で産んだというから,その点でも本書は貴重な出産体験記である。私も妊娠したら当然のように病院に通い,そのまま入院して出産するというのには抵抗がなくはない。確かに,お産は胎児と母体の生命に関わるものだから病院にかかるというのは理解できるが,それこそかつては何もなしに当然のように誰もが家族のなかで出産していたはずだ。もちろん,そういう家族の形態は変わったし,死産の確率の低下とともに,社会における出産観も大きく変化したはずだ。しかし,その病院への依存が,ともすると何かあったときの責任を病院に肩代わりさせようということになっていないだろうか。ともかく,軽い本にしてはいろいろ考えさせられる。

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