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志賀重昂『日本風景論』精読

大室幹雄 2003. 『志賀重昂『日本風景論』精読』岩波書店,334p,1100円.

ということで,志賀重昂『日本風景論』に続いて読み始めた本書。本書は岩波現代文庫のなかの「精読シリーズ」の1冊。とりあえず目次を。

はじめに 日本ラインをめぐって
第1章 日清戦争 大日本精神 愛国心――同時代の人びとはどう読んだか(1)
第2章 科学と文学の融合――同時代の人びとはどう読んだか(2)
第3章 日本海岸の日本と太平洋岸の日本――志賀重昂の地理学(1)
第4章 南日本と北日本――志賀重昂の地理学(2)
第5章 「封建」と「郡県」のはざまで――地理学的な回顧(1)
第6章 もうひとつの地理学 内村鑑三『地人論』――地理学的な回顧(2)
第7章 『日本風景論』における文学――漢文くずれの散文と風景
第8章 風景受容の美学と作法――跌宕の変容と山水癖の残影
第9章 ナショナリズムと楽しい名士――日本ラインはどのように生まれたか
おわりに 登山奨励について

著者は『月瀬幻影――近代日本風景批評史』という著書も出している人で,その延長線上に本書もあるようだが,専攻は「歴史人類学」と書いてある。なにやら中国の歴史に強いらしい。本書は「精読」と書かれていながらも,基本的に著者が歴史家ということもあり,テクスト批評というよりもコンテクスト批評的な印象。でも,目次からも分かるように,前半では本書が同時代的にどう受け入れられたのかを論じ,続いて,地理学的な考察もかなりの分量を使っている。7章辺りは得意分野のようだが,『日本風景論』には漢文の引用が多いので,この辺りの考察は助かる。といよりも,これまで私が読んだ『日本風景論』関連の文章にはその辺りのことは書かれていなかったのでいいですね。
地理学的な考察も前半は石田龍次郎や野間三郎を読み込んだ考察だけでなく,福澤諭吉や内村鑑三なども地理学に物申した人物として論じられているので勉強になります。ただ,一つ気になるのは,これだけの言葉を費やしているのに,全体的な論調がどうにも卑屈っぽいところでしょうか。これはこの人の文体として諦めるしかないのか。まあ,ともかく読んでいて気持ち的にすっきりしない本です。でも,逆を返せば自分自身の論調はどうなんだろうとちょっと気になったりして。

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