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地球儀の社会史

千田 稔 2005. 『地球儀の社会史――愛しくも,物憂げな球体』ナカニシヤ出版,185p.,1700円.

以前にも何冊か紹介した,「叢書地球発見」の第1巻。企画委員の3人のうち,今のところ自ら書いているのは彼一人。その辺はさすがだと思う。そう,千田 稔はもう地理学という枠におさまらない大きなスケールの地理学者で,われわれ小さな地理学者が他の分野にも誇れる研究者である。若い頃から,70歳近くなった現在まで,筆の勢いは緩むことなく,しかもその内容もどれもハイレベルだ。といいつつ,彼の本は数冊しか読んだことはない。前に読んだのは,なぜか彼から送られてきた『地名の巨人 吉田東伍』(角川書店,2003)だが,あまり関心がなかったのに,読み始めたら引き込まれてしまった,そんな魅力のある執筆家である。
そんな彼が地球儀に関する本を書いたってのはけっこう意外だった。まあ,なぜ意外と思ったのかはよく分からないが,基本的に彼の守備範囲は日本の歴史だからだろうか。といっても,その博識は疑いようもないので,どんな本を書いても不思議ではないのだが,地球儀となるとちょっとテーマが限定されすぎなような気もして,これがどれだけの拡がりを持つのか,それが楽しみでもある。とりあえず,目次を示しておこう。

序章 地球儀の新しい物語へ
1 地球儀の誕生――王権と海と
2 日本史の中の地球儀――世界への窓口
3 地球儀という表象
4 征服の野望と地球儀
5 地理教育と地球儀
終章 地球儀というメディア

そんな期待を持って読み始めたので,正直いって前半の1,2しょうはつまらなかった。羅列的に古い地球儀の話をしているだけ。3章は,ヨーロッパの歴史的な図像のなかの地球儀の意味合いを辿るもので俄然面白くはなる。しかし,2001年に出版されたコスグローヴの『アポロの眼』という著作に全く言及がなかったのはどういうことだろうか。私はまだ前半ちょっとしか読んでいないが,パラパラめくると本書と同じ図版があったり,また類似した図版もある。しかも,千田さんが私に著書を送ってきたというのは,彼が監訳したコスグローヴとダニエルズ野『風景の図像学』に私も参加したからだ。確かに,本書はそんなに明確な学説を提示するような内容ではないが,明らかに知らなかったような書きっぷりなのが残念だった。
3章から4章へのつながりももう少し工夫がほしい。でも,さすがに日本の状況を論じた5章は面白かった。でも,最後のまとめとして,最近の話で締めているが,ちょっと中途半端。まあ,ともかく,本書に関しては自ら編集に携わった叢書の1冊目ということもあって,ちょっと付け焼刃な感じは否めない。まあ,千田さんがこの程度の本も書くと知って,ちょっと嬉しかったりもする。でも,1冊も書いていない者がいうことではないよな。

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