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おむつなし育児

クリスティン・グロスロー著,和田和代訳 2009. 『おむつなし育児――あなたにもできる赤ちゃんとのナチュラル・コミュニケーション』柏書房,328p.,1800円.

出産・育児関係の本は一時的なものだから,図書館で借りることにする。図書館で育児関係の棚を見ていたときに,ふと目に付いたのが本書。その時はまだ妊娠中期で,まだ早いかなあと思いながらもペラペラ。ほー,と思いながらもそのまま借りずに書棚に戻した。その後,だんだん予定日が近づくに連れ,わが家でも布おむつの準備を始めているわけですが,おむつの問題は思っていた以上に大変だということを知る。新生児は1日に10~20回も排泄があり,しかも知人のお子さんでも3歳すぎてもおむつは外れていないのだ。まあ,それは常識なんだけど,紙おむつだったら大量の廃棄物が,もちろん布おむつでも大量の水と洗剤,そしてわれわれの労働力を費やす必要があるということを身にしみるようになった。
そこで思い出したのが,本書のタイトルである「おむつなし育児」。そういえば,夫婦で国分寺のカフェスローにランチを食べに行ったときにもそんな話があったように思い出した。そう,カフェスローはNPO法人「自然育児友の会」の重要な拠点になっていて,一角ではそのNPO関連のショップも併設されていた。そう,本書は韓国系アメリカ人によるおむつなし育児の啓蒙書だが,日本でもその動きはかなり浸透してきたらしい。
さて本書の内容だが,まずおむつなし育児とはおむつを全く使わないことではないし,いわゆるトイレ・トレーニングのハウツー本でもない。副題に書いてあるが,重要なのは赤ちゃんとのコミュニケーション。おむつなし育児とセットになって使われる用語が「排泄コミュニケーション」。そう,言葉を学ぶ前の赤ちゃんとのコミュニケーションはいくつかある。その重要なのが食べることと寝ること。赤ちゃんがお母さんの腕の中で泣いた時,お乳が欲しいのか,眠いのか。もちろん,それに加えておむつが濡れているのか,というのもあると思う。赤ちゃんが泣いたり,手足を動かしたり,そういう挙動から,その子が何をしたいのかを読み取って,世話をする。それこそが親子のコミュニケーションである。おむつ育児の場合には,排泄コミュニケーションは事後的なものである。紙おむつが段々進化し,吸収力や通気性が抜群になってきたが,その一方でその弊害も叫ばれている。おむつなし育児はまだそれほど定着していないかもしれないが,この時代にあえて布おむつにこだわる人たちも多い。それは単なる廃棄物を減らすという環境主義的な関心だけではなく,排泄をしても赤ちゃんが快適であると,自分が排泄したことを認識できずに成長してしまい,おむつが外れるのが遅くなるというのが認識されてきたからだ。だから,あえて布おむつで自分が汚物で不快であるということを赤ちゃんに認識させるという目的がある。
しかし,それもやはり事後的なものである。本書の主張はちょっと発想を転換し,生まれたての赤ちゃんだって,自分がおしっこがしたいとかうんちがしたいとかを事前に判断できる,そしてその判断を言葉以外の表現を使って親に伝えることができる能力を有している,という前提に立つ。むしろ,この生まれ持っての能力は,長期間のおむつ使用によって失われてしまうと考えている。おむつ育児によって赤ちゃんは「おむつのなかに排泄することを覚える」のだという。だから,一度覚えたおむつへの排泄を,再び3歳になる頃におまるやトイレへの排泄へと教育しなおすということになる。その期間に紙おむつであれば大量の廃棄が,と先ほど述べたようなこと。
確かに,おむつなし育児は手がかかります。しかし,それは日に10回ものおむつ替えの労力と代わらないもので,しかもおむつなし育児は常に赤ちゃんと向かい合って,その子が何を欲しているのかを読み取ることだから,機械的なおむつ交換と違って,親子の結びつきを強める行為だという。
おむつなし育児は全くおむつを使わないわけではない。もちろん,そういうあり方もあるが,1日に1回,おむつをはずす時間を設けること。あるいは1日に1回,おまるやトイレに赤ちゃんを「ささげて」,「シーシー」と合図をする。あるいは,おむつを外してお知りの下に敷き,赤ちゃんが排泄する様子を観察し,排泄前にどんな兆候があるのか,あるいは起きたばかりや授乳後など,排泄しやすいタイミングを知ること。そうして,赤ちゃんの排泄について親が観察し,また人間の排泄について赤ちゃんによく説明すること。排泄物で体を汚すことが不快で,おむつの外に排泄できた時に快適なことを教えること。排泄の後の赤ちゃんの気持ちよい表情をみて,親が喜ぶこと。そんなことが,魅力的に本書では語られています。なので,おむつなし育児は片意地張ってやるものではなく,赤ちゃんとより深く接する術として理解することがよいようです。もちろん,順調に行けばおむつなし育児によって,おむつを使わずに済む時期は1歳前後と,非常に早まることもありますが,やはり3歳前後まで完全には外れないこともあるようです。なので,おむつ代をケチろうとか,布おむつの選択の労力が省けるとかというのは,おむつなし育児で必ず伴うものではないし,おむつなし育児も前進後退を繰り返す可能性も十分にあるということです。まあ,ともかく気軽に取り組んで欲しいということと,たとえ失敗したとしても(本当は失敗にめげずに気長に続けることが大切なのですが),無駄なことは何もなく,それが後のトイレ・トレーニングに活きてくることもある,とのこと。
最後に本書の難点も少し。本書は啓蒙書ですから,分かりやすさが第一です。そして,米国特有の書き方というのでしょうか。非常にくどいです。おむつなし育児はいつでも始められるということを売りにしていますから,本書はおむつなしを始めようという時期ごとに章が分かれています。「生後~3ヶ月」,「3~8ヶ月」,「8~12ヶ月」,「12~24ヶ月」,そして最後に「おむつからの卒業」といった具合に。なので,読者は自分に該当するところを読めばよいのですが,まあ私は通して読んだわけです。なので,非常に繰り返しが多い。しかも,意外に具体的な記述が少ないです。そして,グッズの紹介も米国で主流なものが中心でちょっとイメージしにくいですね。
まあ,ともかく授乳というのは母親にしかできないことですから,おむつなし育児に懐疑的な妻が見ていない隙に,密かに父子間の排泄コミュニケーションを楽しもうと思っています。

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