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ジョン・ボールの夢

ウィリアム・モリス著,生地竹郎訳 1973. 『ジョン・ボールの夢』未来社,212p.,1200円.

本書には1886年から翌年にかけて書かれた小説『ジョン・ボールの夢』の他,1886年の「王様の教訓」という短編と,1894年に書かれた「余はいかにして社会主義者となりしか」という文章が収録されている。
1890年に書かれた『ユートピアだより』は既に読んでいる。こちらは主人公がふと目が覚めると未来にタイムスリップしていたという設定ですが、こちら『ジョン・ボールの夢』はその逆。中世の頃に逆戻りという設定。ジョン・ボールというのは実在した人物らしく、この物語のなかでも彼は社会改革の主導者なのですが、彼の生きた時代にも一揆のような社会運動が起こったという。そういう史実を想像で膨らましている物語。分量的には『ユートピアだより』よりも随分少なく、そのユートピア的要素も分かりにくい。基本的にモリスが理想とする社会主義社会像はノスタルジックなものではあるが、無条件に過去をいいと思っているわけではない。もちろん、過去にもさまざまな時代があるし、実際に本作で設定されている時代は、封建社会からの脱却を志す人たちが描かれるわけで、当然モリスが封建社会を望んでいるわけではない。
ということで、本作におけるジョン・ボールと、現代から過去にタイムスリップしてしまった主人公との会話は非常に興味深い。作者の理想郷を読者に押し付けるのではなく、読者に考えさせる作品。でも、正直なところでいえば、その会話はかなり単調で、ドラマティックな展開を望む読者には退屈な作品なのかもしれません。でも、モリスは別に娯楽目的でフィクションを描いているのではないですね。

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