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日常生活批判2

アンリ・ルフェーヴル著,奥山秀美訳 1970. 『日常生活批判2』現代思潮社,285p.,850円.

2というくらいだから,1がある。ついでにいうと,序説もあります。ということで,ひとまず全体を見渡してみましょう。

『日常生活批判序説』(原著1947年,邦訳田中仁彦1968年)
1. きまり文句になった幾つかの言葉についての簡単な註解
2. 日常生活の認識
3. 日常生活の批判的認識としてのマルクス主義
4. マルクス主義思想の発展
5. フランスの農村で或る日曜日に書かれた覚書
6. 可能なるもの
『日常生活批判1』(原著1958年,邦訳奥山秀美・松原雅典1969年)
1. 回顧
2. この十年間に何が変わったか
3. チャーリー・チャップリン,ベルトルト・ブレヒト,その他について
4. 日常生活における労働と余暇
5. 《現代世界》の総体についての考察
6. 再び疎外の理論
7. 疎外された労働
8. 哲学と日常生活批判
9. 企図とプログラム
『日常生活批判2』(原著1961年,邦訳奥山秀美1970年)
第1章 問題の要約
第2章 形式的諸道具
1. 公理と公理化
2. 仮説の役割
3. 変導法と変導
4. 水準の概念
5. 連続と非連続
6. ミクロとマクロ
7. 標識 基準 変数
8. 諸次元
9. 構造の概念
第3章 特殊的カテゴリー
1. 全体性の概念
2. 現実性の概念
3. 疎外
4. 生きられるものと生
5. 自然発生的なもの
6. 曖昧性の概念
7. 挑戦と不信
8. 社会的空間,社会的時間
9. 実践
10. ロゴス,論理,弁証法
11. 論理と性格学
12. 全体的な場
第4章 意味の場の理論
1. 意味の場
2. 信号
3. 記号
4. シムボル
5. イメージ
6. 幾つかの混乱について
7. 意味の場の諸特性
8. 意識と意味の場
9. 意味の場の諸法則
10. 社会的テクスト
11. 対話,談話,会話
第5章 過程の理論(累積的過程と非累積的過程)
1. 進歩の概念にたいする批判
2. 不均等発展
3. 非累積的社会
4. 累積的過程の概念
5. 概念の一般化
6. 非累積的過程
7. 教育学的,文化主義的幻想
第6章 モメントの理論
1. 反復の類型学
2. モメントと言語
3. モメントの星座
4. モメントの定義
5. モメントの分析法
6. モメントの日常性

さて,ちょっとややこしいが,原著と日本語訳の構成は異なる。原著では,『日常生活批判1』には1から9までの序文に,『日常生活批判序説』が再録されたものらしい。しかし,日本語版の『日常生活批判2』には序説は採録せず,原著の『日常生活批判2』の第1章と第2章を収録している。つまり,本書日本語版の『日常生活批判2』には原著の第3章以降が収録されているということです。
訳者も1と2の間に1年が経過してしまって申し訳ないと書いているが,私が1を読んだのはもう10年位前のことだ。こうして,詳細な目次を書いていても,内容はすっかり忘れている。しかも,当初ルフェーヴルは『日常生活批判3』も予定していたようで,2まで読み終わってもすっきりした終わり方ではない。結局のところ,日常生活をどのように批判して批判の先に何があるのかは判然としない。とりあえず,2までの内容をきちんと把握するためにはもう一度序説から通して読む必要があると思うが,とりあえず本書のみで学んだこともいくつかある。
まず,最後の方で登場する「モメント」という概念はもともと剛体力学の概念だし,4章のタイトルは「場の理論」というやはり物理学の用語である(これについてはそれとの関係はないと本文でも否定されているが)。本書の論調のなかで時折,当時の自然科学の議論が登場するのが面白い。先日紹介したイリガライの本にも流体力学からヒントを得た議論があったが,人文科学者でも自然科学の最先端理論に敏感な人はけっこういる。
続いては,議論のなかでやはり「弁証法」が頻出するのはルフェーヴルらしい。そして,最も本書で興味深かったのが4章の10「社会的テクスト」という文章だ。この章の前半は今更ながら記号論のおさらいをするわけだが,それによって,社会や風景,都市をテクストと見做して認識,解読する方法がかなり素朴に示されている。これは現代の地理学においてもじっくりと検討に値する議論だと思う。ルフェーヴルの他の都市に関する著作の再読においてヒントを与えてくれるでしょう。

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