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イタリア・ルネサンスの文化と社会

ピーター・バーク著,森田義之・柴野 均訳 1992. 『イタリア・ルネサンスの文化と社会』岩波書店,428p.,3700円.

岩波書店のニューヒストリーシリーズの1冊。このシリーズは,ロバート・ダーントン『革命前夜の地下出版』と,リン・ハント編『文化の新しい歴史学』に続いて3冊目。そして,意外にも多くの著書が翻訳されている,ピーター・バークの本を読むのは初めて。私が読むルネサンスものといえば,ネーデルラントなど,北方のものや,英国のものに偏っていたが,やはりルネサンス本場といえばイタリア。それを全般的に把握したいとは以前から思っていたので,ちょうどよい。本書は著者にとって2冊目の単著ということで,初版は1972年に出版されたもの。しかし,大幅に改定された1987年の版を翻訳したのが本書。まずは目次から。

序章
第1部 ルネサンスの問題
 第1章 イタリア・ルネサンスの芸術
 第2章 歴史家たち――社会史と文化史の発見
第2部 芸術とその環境
 第3章 芸術家と著述家
 第4章 パトロンと注文主
 第5章 芸術作品の用途
 第6章 趣味
 第7章 イコノグラフィー
第3部 社会的背景
 第8章 世界観――その主な特徴
 第9章 社会的枠組み
 第10章 文化的・社会的変化
 第11章 比較と結論

訳者あとがきによれば,本書と同時期に出版されたイタリア・ルネサンスに関する歴史研究といえば,バクサンドールの『ルネサンス絵画の社会史』であり,これも平凡社から翻訳が出ているので読み比べたいものだが,そのアプローチはかなり対照的であるらしい。バクサンドールの本は美術史の文脈のなかで,作品解釈に社会的要素を取り込んだものだと想像できるが,本書は個々の文化作品の分析をするわけではない。なぜ,ルネサンス芸術がイタリアで盛んだったのか,という素朴な問いに答えようとする,かなり視野の広い研究である。なので,美術史を中心に読んでいる私の読書歴からすれば,本書のアプローチはなかなか面白い。それこそ,先日読んだウィリアムズの『長い革命』と似た調査方法かもしれない。そもそも,ウィリアムズの主著『文化と社会』はタイトルからして本書に影響を与えているはずだし,実際に本書のなかでも言及されているので,分析方法の類似は不思議なことではない。
バークがいうところのルネサンス文化にはいわゆる芸術としての絵画や彫刻だけではなく,音楽や建築,文学も含み,さらにはいわゆる人文主義者という今日でいうところの人文・社会科学者も含んでいる。そして,イタリアといっても漠然と捉えるのではなく,それぞれの文化の担い手たちが活躍していた地方ごとに考察を加えているのが地理学者としては興味深い。かれらの出身,活動場所,そしてパトロンたちの存在などの地域差が論じられる。
そういった意味でも,第2部が本書の面白いところ。第3部はあまりにも背景の話に終始してしまっていて,文化との関わり合いがなかなか普通の読者には分かりづらい。でも,第8章はとても面白い。一方で,第2部でも第7章はかなり期待したもののイコノグラフィーについてあまり勉強にはならなかった。最後の第11章ではイタリアとの比較としてネーデルラントは分かりやすいとしても,なぜか江戸時代の日本が登場するのは謎。唐突に出てきて短い記述で,この本自体が結論へと至ってしまうのは,なんとも尻切れトンボ的だ。
そんな不満はあるものの,とかく過去の芸術を現代の感覚で考えてしまいがちな私たちに,その芸術が生産された社会的背景を改めて考えさせるという意味では,初版が出た時代としては画期的だったのだと思う。

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