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長い革命

レイモンド・ウィリアムズ著,若松繁信・妹尾剛光・長谷川光昭訳 1983. 『長い革命』ミネルヴァ書房,307p.,3300円.

本書も長い間入手したいと思っていた1冊。私は修士課程2年の時,1994年にカルチュラル・スタディーズの影響を受けた地理学の動向の一端を紹介する文章を書いた。といっても,紹介するも何も自分自身が勉強するので精一杯だったが,その頃に読んだのがウィリアムズの『文化と社会』。この本は当時通っていた大学の図書館が所蔵していたので,それで読むことができたのだが,それとセットとなってよく引き合いに出される本書は所蔵していなかった。その頃は雑誌の研究をしていて,たまに国会図書館に行っていたので,ついでに請求して出してもらってパラパラめくったことだけはあった。その後,『文化と社会』は最近復刊になったが,『長い革命』は古書店でも一度もお目にかかったことがない。しかし,最近はAmazonのマーケットプレイスがかなり充実しているんですね。以前よりもかなり安値であったために,思わず購入。17年越しの夢がついにかないました。目次は以下の通り。


第Ⅰ部
第1章 創造する心
第2章 文化の分析
第3章 個人と社会
第4章 社会のイメージ
第Ⅱ部
第1章 教育とイギリス社会
第2章 読者層の成長
第3章 大衆新聞の成長
第4章 「標準英語」の成長
第5章 イギリス作家の社会史
第6章 演劇形式の社会史
第7章 リアリズムと現代小説
第Ⅲ部
1960年代のイギリス

ちょっと期待しすぎましたね。第Ⅰ部では,彼の重要な概念「感情の構造」が出てきたりして学ぶことがあったし,今日では論じつくされたテーマのように思えても,原著が1961年の本書にあっては素朴である意味興味深い。
しかし,本書は同じウィリアムズの『コミュニケーション』と同様に,英国における状況の説明が多く,ちょっと読みにくい。しかし,主にマス・メディアの分析であった『コミュニケーション』に対して,文学や演劇,教育や標準英語などについて解説されていて,けっこう量的なデータも用いているのはウィリアムズらしい。文学史に関する分析のなかでも,個々の作家の話は少なく,時代によって文学作家が主要大学を出ているかとか,親の職業がなんだとかそういう分析は今日では避けられがちなので余計に新鮮。
ともかく,彼のいう「長い革命」とはかなり分かりにくい。おそらく2つの意味合いがあるのだろう。1つ目は産業革命やIT革命と同じ意味合いにおけるコミュニケーション革命である。そして,2つ目はフランス革命やロシア革命と同じ意味における民主主義革命である。そもそも,革命という語は「長い」という形容詞とは相容れないもので,短い期間に社会全体が大きく変化することをいうが,本書はここで私が2つ挙げたものについて,長い期間を通じて起こっている変化と,その変化を前提として長い期間をかけて達成していくよりよい社会を目指しているものと思われる。といっても,私が民主主義革命とあえて書いたものは,著者の意図とは異なるかもしれない。ウィリアムズの決して多くない日本語訳の文章のなかに「社会主義社会をめざして」(『社会主義の新展開』平凡社,所収)という素晴らしい文章があるが,やはり1960年代のマルクス主義者としては「社会主義」という語を使っているが,今日的にこの後は誤解を招きやすい。
ウィリアムズの目指す社会は本書では詳細にされていないが,21世紀に生きる私たちがそのヴィジョンを明確にし,それを達成すべき時期に来ていると思う。

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