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大正デモクラシー

成田龍一 2007. 『大正デモクラシー』岩波書店,244p.,780円.

岩波新書の「シリーズ日本近現代史」のなかの1冊。以前、『ネオ・リベラリズムの精神分析』で著者の言葉として紹介したように、近年はマクドナルドや吉野家、ユニクロといった安値競争が激化しているなか、アカデミズム出版業界も単価が安い新書への充実が図られている。そんななか、岩波新書でもこのシリーズが全10巻で企画されていたことを最近知った。
私事だが、最近引越しをした。未読の本も含めほとんどをダンボールに積めてしまい、読書中の本も引越し当日前に読み終えてしまい、あまり大きくない本をということで、急遽購入したもの。本当は同じシリーズの吉見俊哉『ポスト戦後社会』が欲しかったのだが、職場近くの書店にあったのは本書だった。もちろん、成田龍一は『「故郷」という物語』で知っていたし、西川長夫『国境の越え方』の日本近現代史の解釈を読むにつれ、「大正デモクラシー」については教科書レベル以下の知識しかなく理解不足だったので、ちょうど良かった。一応目次を示しておこう。

はじめに
第1章 民本主義と都市民衆
第2章 第一次世界大戦と社会の変容
第3章 米騒動・政党政治・改造の運動
第4章 植民地の光景
第5章 モダニズムの社会空間
第6章 恐慌下の既成政党と無産勢力
おわりに

目次で分かるように、本書は大正デモクラシーの解説書ではない。大正史概説といったところか。冒頭に「「大正デモクラシー」の語は、時期や内容、指し示す対象、あるいは歴史的な評価にいたるまで、論者によってさまざまに用いられている」(p.vi)と書かれているが、本書では著者なりの大正デモクラシーの定義が示されるわけでもなければ、さまざまな論者の用法が検討されるわけでもない。かといって、大正時代に起こった出来事を全て「大正デモクラシー的なもの」として解釈するほど大胆でもない。まあ、とにかく大正時代について知りたいという素朴な動機で読むのが一番いいのかもしれない。
そういう意味では、私も本書の読書を通して、大正デモクラシーとは何ぞやという問いに対して明白な答えができるような知識を得たわけではないが、いくつか知らなかったこと、知識が曖昧だったことを知ることができた。第4章や第5章の内容もそれなりに知っているつもりではいたが、大正時代ということを意識して、他の出来事と関連付けることで理解が深まる。なんといっても、都市民衆史を専門とする著者ですから、米騒動などの社会運動の高まりと、そこから市民の政治参加(といいながら、当時の政治家がどれだけ一般市民と近い立場にあったのかは不明)としての政党のあり方に関する記述は学ぶことが多かった。
でも、やはり史実が次々と説明される本書は私にとっては非常に読みにくく、改めて私の歴史的知識の足りなさを思い知らされる読書でもあった。ちなみに、あとがきによれば、成田氏は卒業論文以降、大正デモクラシーに関する研究をしていたらしい。30年以上たって、昔のテーマについてまとめるってのも素敵です。

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