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精神病

ジャック・ラカン著,ジャック-アラン・ミレール篇,小出浩之・鈴木國文・川津芳照・笠原 嘉訳 1987. 『精神病 上下』岩波書店,266+292p.,2300+2600円.

私は精神分析の考え方に惹かれる。しかし,困ったことに,実際フロイトやラカンを読んでみるとチンプンカンプンなのだ。多少なりとも理解できるのはジジェクぐらいなものだが,ジジェクも最近の方向性はまったく分からず,読まなくなってしまった。しかし,なんとか人文書院のフロイト著作集は少しずつ集め,数年に1冊ずつ読んでいる。ラカンは『エクリ1』と『テレヴィジオン』『二人であることの病い』『精神分析の四基本概念』を読んだだけ。とりあえず,岩波書店から出ている,ミレールが編集した講義録を古書店で安価で見つけた場合には買うようにしている。本書は上下巻だし,タイトルだけだと専門的すぎるかなと思っていたけど,なぜか購入していた。随分前に読み始めて,ようやく上下巻が読み終わった次第。こうして目次を書いてみると,おそらく目次をみて購入を決めたのだと思う。

上巻
精神病の問いへの序論
1 精神病の問いへの序論
2 妄想のシニフィカシオン
3 大文字の他者と精神病
4 「私,豚肉屋から来たの」
精神病現象の主題と構造
5 騙さない神,騙す神
6 精神病現象とそのメカニズム
7 想像的崩壊
8 象徴界のフレーズ
9 無意味,そして神の構造
10 現実界におけるシニフィアンと叫びの奇跡
11 原初的シニフィアンの拒絶
下巻
シニフィアンとシニフィエ
12 ヒステリーの問い
13 ヒステリーの問い(2)〈女であるとは何か〉
14 シニフィアン,それはそれだけでは何も意味しない
15 原初的シニフィアンとそのうちのあるものの欠損
16 狂者の秘書
17 隠喩と換喩(1)〈彼の麦束は欲深くなく,恨み深くもなかった〉
18 隠喩と換喩(2)シニフィアンの分節とシニフィエの転移
19 講演,フロイトの一世紀
穴の周囲
20 呼び掛け,暗示
21 クッションの綴じ目
22 〈君は私に就いてくる人だ〉
23 街道と〈父である〉というシニフィアン
24 〈君は〉
25 ファルスと大気現象

そう,精神病という特殊なテーマのタイトルがついていながら,ラカンの主要な概念がたくさん出てくるのだ。シニフィアンとシニフィエという記号論の話や,隠喩と換喩という比喩表現,象徴界・想像界・現実界という三項については当然といえるけど,大文字の他者やクッションの綴じ目など。
本書は1955年11月から1956年7月に至るまでの講義を記録したものだ。『精神分析の四基本概念』も講義録ではあるが,読みやすさでは断然本書の方が優れている。原著のセミネール集は全部で25巻分もあるようだが,講義年度によって,聴衆も違うのだろうか。本書の前半ではフロイトも分析の対象にしたというシュレーバーなる人物が書いた『ある精神病患者の回想録』についての詳しい説明と検討があったりして,論点が明確。上巻では何が精神病で何がそうではないのかという論点も明確だが,下巻になると,上述したラカン特有のテーマがいろいろ出てきて,精神病とどう関係しているのか分かりづらくなってくる。まあ,読みやすいといっても,読後明確な理解が残ったかというと自身はない。なので,この読書日記もこの辺で終了します。

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