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県庁おもてなし課

有川 浩 2011. 『県庁おもてなし課』角川書店,461p,1600円.

実はけっこう前に読み終えたのだが,妻のママ友に貸していたために,読書日記を書くのが今になってしまった。まあ,小説だから気負いなく,記憶にあるままを書けばよいのだが,なんとなく放置してしまっていた。
そもそも,現代日本の人気作家の作品はあまり読まない私がなぜこの作品を読もうと思ったのか。それは,どこかで何かの雑誌を立ち読み(実際にはおそらく献血ルームだから立ち読みではないが)していた時に,本書を紹介する書評記事を読んで気になっていたのだ。本書のタイトルは高知県庁の観光振興部に実在する課であり,単に名前を借りているだけではなく,実在する高知県を舞台に繰り広げられる。観光は私の研究関心でもあり,単なるフィクションではなく,実在する場所を描いているとなれば読んでみたくなる。そんな時に,映画ファン友だちの「岡山のTOM」さんが本書を絶賛するmixi日記を書いていて,私も重い腰を上げた。TOMさんはそもそもこの作家が好きで,映画化された『阪急電車』は私も観ていて,やはり実在する路線を舞台にした(実在する大学も登場する)その作風は好感が持てた。
ということで,読んでみたわけだが,やはりなかなかどうして面白い。一気に引き込まれて3日くらいで読了した。元来読書にまとまった時間を使わない私だから,3日間でもかなり早い方なのだ。そもそも,なぜ私が現代日本のベストセラー作品が苦手かというと,その多くが決まって第三者的視点から書かれ,ページの多くは登場人物の発話と行動や心情の実況中継で成り立っているからだ。そもそも,小説とはその文体までもが創意工夫の一つであるはずなのに,ベストセラーの売りといったらプロットや物語展開,キャラクター設定の発想にある。そもそもが,映画化やドラマ化を前提としているようなものだ。本作もそうした一般的特徴から大きく外れてはいないが,ここ10年ほど日本映画を中心に観るようになった私にとって,こうした作品への抵抗は以前よりもなくなったといえようか。でも,この作者である有川 浩氏はやはり読書好きに評価されるように,丁寧な文体は好感が持てます。
さて,この手の小説に私がわざわざ粗筋を書くことはありません。恋愛沙汰はこの作品では副次的な役割しか果たさず,恋愛小説を求めて読む読者には不満が残るかもしれませんが,お役所の仕組みや個々の観光地の事情など,作者自身が高知県出身だというのはありますが,非常に細かく調査してあって,フィクションではありますが,ある種の実態を理解する意味では,中途半端な観光研究のモノグラフよりもよっぽど面白い。
ということで,学生への小レポート課題図書として指定してしまいました。どんなレポートが提出されることやら。

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コメント

面白く読まれたようで、私としてもひと安心(笑)。
 
>ということで,学生への小レポート課題図書として指定してしまいました。
 何という素晴らしいことを!

投稿: 岡山のTOM | 2011年11月12日 (土) 20時41分

TOMさん

書き込みありがとうございます。
返信遅くなりました。

学生のレポート,読んでいますよ。
いつもよりよくできたのが多いのは,やはり課題図書が面白いからでしょうね。

投稿: ナルセ | 2011年11月18日 (金) 22時20分

阪急電車に引き続き面白かったです。確かに中途半端な観光研究のモノグラフより面白い!30歳目前にして,ようやく小説が面白いものと認識しました(笑)

投稿: よしだくにみつ | 2011年11月23日 (水) 19時13分

よしだくにみつ君

おっ,君も読みましたね。
私ももともと文学少年というわけではありませんでしたが,学術的に面白い小説があれば,学会誌の書評にも投稿してたりしてるんですよ。
書評原稿はレフェリーなしなので,けっこうなんでもありです。

投稿: ナルセ | 2011年11月24日 (木) 21時46分

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