« 寒い日が続きますね | トップページ | 最近の息子 »

〈象徴形式〉としての遠近法

エルウイン・パノフスキー著,木田 元・川戸れい子・上林清雄訳 2003. 『〈象徴形式〉としての遠近法』哲学書房,236p.,2400円.

ヴァーブルク学派のパノフスキーの著書は,『ゴシック建築とスコラ学』『イコノロジー研究』『視覚芸術の意味』についで4冊目。といっても,本書は本文は74ページあまりで,原著は論文といった方がふさわしいかもしれない。ただし,注釈が本文より長く124ページあり,図版も多い。なので,翻訳では立派な1冊となる。
この辺りの文献は,10年前に日本語訳が出版された『風景の図像学』という本の翻訳に参加した時に読んだ,英国の地理学者コスグローヴの論文から学んだことが大きい。もちろん,そのなかでこのパノフスキーの本も知っていた。
『風景の図像学』は1988年に原著が出版された論文集で,コスグローヴはその共編者だったが,その後彼の単著『象徴的風景と社会構成体』という1984年に出版されたものを読み,読み直して私の2010年の論文に大いに利用させてもらった。そして,現在彼の確立した風景研究の流れに沿った研究を進めていて,彼の1985年の雑誌論文を改めて読み直している。そんななかで,本書はこの機会に是非読まなくてはならないと思った次第。実は,初版は1993年にハードカバーが出ており,またこのペーパーバック版の後にはちくま学芸文庫にも収録された。しかし,私は図版のことも考え,この版を購入することにした。
前半は難しい。コスグローヴはもっぱらルネサンスから遠近法と風景画の話を始めるが,本書は古代から始める。遠近法の技術は数学の一分野の幾何学の応用でもあるが,ユークリッドの『幾何学原論』は古代に書かれているから,その時代にある種の遠近法的な技術が生まれても不思議ではない。しかし,もちろんそれはルネサンスを経由した近代的な様式とは異なったものである。そして,著者はその後の中世における絵画の空間表現についても詳細に検討する。二次元の絵画空間における室内の表現において,奥行きを持たせるためのさまざまな工夫がなされているのだ。そして,いよいよ本格的な遠近法の技術は15世紀にやってくる。図版も多く,後半に向けて段々面白くなる本です。
ただ,やはり本文以上に長い注釈が読みにくさの原因となっているのは否めませんな。ともかく,期待以上に刺激的な本でした。

|

« 寒い日が続きますね | トップページ | 最近の息子 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/218863/53919938

この記事へのトラックバック一覧です: 〈象徴形式〉としての遠近法:

« 寒い日が続きますね | トップページ | 最近の息子 »