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ゲルハルト・リヒター/光と仮象の絵画

市原研太郎 2002. 『ゲルハルト・リヒター/光と仮象の絵画』ワコウ・ワークス・オブ・アート,157p.,1800円.

こちらに書いたように、リヒター関係で始めて購入した本なのに、読んだつもりでいて読んでいなかった本。本書は1993年に『ゲルハルト・リヒター/ペインティング・オブ・シャイン』というタイトルで出版されたものの増補版・改訂版だということ。目次をみれば分かるように、同タイトルの章があり、他に書き足されている。

ゲルハルト・リヒターの過去、未来、そして現在
ゲルハルト・リヒター=ペインティング・オブ・シャイン=
希望のペインティング――ゲルハルト・リヒターとの対話
ゲルハルト・リヒターと「9.11」

以前から繰り返しているように、リヒターとはドイツの画家。彼の作品を解釈する著者のキーワードが「シャイン」ということだが、当然これはドイツ語のSchein。なのに、タイトルには英語のかな表記でってのはおかしい。そんなこともあって、新版ではそれを「光と仮象の絵画」と日本語にしたのだろうか。Scheinとは日本語にされているように、光と仮象という二つの意味合いを持ち、どちらもリヒターの芸術性を表現するのに相応しいと著者は考えている。しかし、私はリヒターの作品の現物を観たことがないからだろうか、彼の作品に「光」を強く感じることはない。
まあ、その点は置いておいても、本書はリヒターの芸術家人生の長い期間の作品を見渡し、一通りの説明をしている。これまで他の人が指摘した点(どちらが先かは分からないが)も含めて一通りの解釈も出揃っている感がある。これまでリヒター関係の文章を読んできて、総括するにはもってこいの本だった。彼独自の議論といえば、ルネサンス以降の絵画史をフーコーの『言葉と物』にそくして3つの時期に区分し、それらの時期の移行期の代表的な芸術家を挙げ、まさに現在進行形の時期の終わりにリヒターを位置づけるということ。もちろん、リヒターに関しては「絵画の終わり」ということと結び付けられているが、こうして長い絵画史のなかに位置づけられると面白い。しかも、一般的な近代理解ではなく、フーコーの表象論に従っているところがいい。
インタビューはこれまでのインタビューでなされた議論の繰り返しが多く、面白くない。最後の章「ゲルハルト・リヒターと「9.11」」で面白いのは、合衆国でのリヒター受容がかなり遅く、アメリカ人がリヒターを受容するには9.11のような事件が必要だったと指摘しているところ。

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