« 今年初ライヴ | トップページ | 定本 想像の共同体 »

学会発表

3月28日(水)

この日は,前にも予告したが,日本地理学会の2012年度春期学術大会。私の出身大学,八王子市南大沢にある首都大学東京で開催される。今回は初めて託児所が設置されるということで,事前に予約をして息子を連れて行く。私の発表は10:20からだが,今回はパワーポイントの資料を使うので,事前にファイルを会場のPCにコピーしなくてはならない。幸い,私の第8会場は朝の始まりが9:40からだったので,8:20の電車に乗り,9時前に南大沢駅に到着する。
託児所設置で,子連れOKのはずなのに,受付は階段上。しかも,その建物の入り口は一応スロープがあるが,無駄に階段が多い場所。さらに,託児所は階段を上り下りしなくてはならない奥まったところにあった。当然私も含めベビーカーで連れてくる人がいるというのに...
私が託児所を利用するのは私の発表がある10時から11時。そして,午後一で聞きたい発表があったので13時から14時の合計2時間。1時間1000円なので,合計2000円。まずは3階にある第8会場へと息子を連れて移動し,持参したUSBメモリでファイルをコピー。当然のように使用されているPCはWindows 7なので,すっかり操作が分からん。しかも,会場にいるスタッフは全く役に立たない。同じ会場の発表者である立岡さんに聞いたりして。
数日前からメールの交換をしていて,私の発表後にちょっとお会いするはずだった島津俊之さんに早速ばったり。10時前の時間はまだまだ発表を聞かずに会場をウロウロする人も多く,いろんな人に会う。なかなか10時にならず,息子を方々で歩かせるが,意外に託児所の場所が分からず,結局10時前後でバタバタし,預けてから急いで第8会場へ。私の前の発表は東京大学の学生さん。
山田彩美「東京多摩地区水道事業の統合」
まさに東京都多摩地区に住む私にとって身近な話題。自分の発表もあるので身を入れて聞くことはできなかったが,学生さんとは思えない落ち着きぶりで,質疑応答もしっかりとこなしていた。さて,私の発表。
成瀬 厚「塗りつぶされた風景:ゲルハルト・リヒターの風景芸術」
今回はなんといっても,作品を観てもらわないと話にならないので,私の研究人生2度目のパワーポイント。秋の人文地理学会の時と違って,声がよく出ていたので,迷わずマイクなし。しかし,会場の入りはあまりよくなく,後方に座っている人が多かったので果たして聞こえたのかどうか。欲張っていろんな作品を入れてしまったので,思いの外説明に時間を食ってしまった。結局,結論めいたことはほとんどしゃべれずに終了。質疑応答を待つ。
しかし,前回同様,会場は静まり返る。困った座長の山元貴継君が2つも質問してはくれたものの,イマイチ私の補足説明を促してくれるものではなかった。そもそも,この座長の選択はどうだったのか。質問がないとはじめから分かっていれば,私の結論をしゃべる時間をくれ,という感じ。タイトルに引かれて,次の発表も聞く。
熊谷圭知「場所論と場所の生成――他者化を越えた地誌のための覚書」
副題でちょっとどうかなとは思ったものの,一応私は場所研究者でもあり,前回の発表では「生成」という言葉も使ったので聞くことにした。しかし,やはり案の定パプアニューギニアの自分のフィールドの話。確かに前半の場所論はそれなりに勉強しているが,ケーシー『場所の運命』は読んでいないようだ。熊谷さんの論法は大体決まっている。地理学で話題のトピックがあると,それを自分のフィールドワーク解釈のキーワードにするのだ。最近は地理学雑誌に書いていないので,詳細は分からないが,恐らく調査の仕方を反省したり,従来とは画期的に異なる解釈を提示したりということはあまりなく,いかに自分の調査を正当化するかということを繰り返しているような気がする。
さて,11時前には息子を迎えにいかなくてはならないので,熊谷さんの発表が終わる前に席を立ち、移動。ちなみに,10時に預ける際には他に3人の子どもがいて,迎えにいった時は1人だった。今回の託児所の定員は5人だったが,もしかすると預けてがいなくて,学会での託児所設置は意味がないということで中止になりかねないと思って私は預けることにしたのだが,それなりに需要はあるらしい。そして,わが子は1時間くらいだったら何の問題もなく楽しく遊んでいたようだ。幸い,息子の好きなままごと用具がかなり揃っていて,案の定それで遊んでいた。
島津さんと話をするために,受付付近に移動。こちらでは,濱田琢司君や山口 覚君に会う。他にも東京都立大学時代の先輩や後輩,先生などはけっこう来ていて,息子の顔を見てもらう。いろんな人にかまってもらい,その後島津さんと立ち話で話し込んでいるうちにベビーカーで寝てしまったらしい。とりあえず一足先に食堂に移動。といっても,購買で私はパンと缶コーヒーを買い,息子のために持ってきた昼食を電子レンジで温め,まだ空いている学食で息子を寝かせたまま私が食べる。誰か知り合いがいるかと思ったが,結局誰も現れず,学食も混んできたので,外に出ると,午前中の発表を聞いていたと思われる地理学者たちがこぞってやってきて,幾人か知り合いにも会う。ちょうどここで息子が起きたので,食事をして,託児所に移動。午後聞いた発表は以下。
杉本昌宏ほか「大阪日本橋におけるサブカルチャーによる創造都市の研究」
なにやら,大阪の日本橋という街は元々電気街ということもあって,秋葉原のような状況になっているという。それを報告者たちはタイトルのように呼んでいる。ここの事例研究だけに話を集中すればいいのに,『らき☆すた』の鷲宮の話などして。結局,事例の日本橋の話もGISを用いてくだらないデータを地図化しているだけで表層を捉えているにすぎない。せっかく,フロアから同じ地区で調査をしている研究者から貴重な質問があったのに,その質問の意図すら理解していない様子。この種の研究は卒号論文のテーマとしては面白いかもしれないが,大学院に入ってまで続けるのであればもっと本腰入れてやってほしいところ。
山本健太・久木元美琴「東京における小劇場演劇観劇者の行動特性――劇場Aにおける劇団Hの公演を事例として」
報告は山本さんだったが,この人物がなかなか地理学者っぽくなくて面白い。しかし,けっこう期待していたこちらの報告も前半は期待はずれ。日本における演劇は東京に一極集中しているって話と,演劇界の簡単な戦後史が説明され,実際のアンケートの集計でも社会学的な属性の説明で,一向に地理学的なテーマに移行しない。ようやく,最後だけ数件の事例でその行動特性が示されたが模式図的な感じで説得的な分析とはいえない。
次の発表まで聞くと息子を迎えにいくのに遅れてしまうので,ここで会場から出ると,杉山和明君も一緒に出てきた。そして,しばらくすると山口 晋君が登場し,しばし歓談。すると,先ほどの報告者である山本さんが携帯電話で話をしながら会場から出てきた。しばらくすると,会場に戻ろうとしてわたしたちの前を通ったので,「成瀬です」と引き止める。実は,発表のなかのパワーポイント資料に私の下北沢論文が言及されていたのだ。まあ,話してみるとなかなか面白そうな人物。外見とは違って中心的な研究はプラモデル産業の地理的展開という地味なテーマで論文を書いているとのこと。今回の報告の共同研究者は同じ東京大学の大学院の院生時代の仲間とのこと。まあ,こういう研究もあっていいのではないでしょうか。
ということで,時間が来たので私は託児所に息子を迎えにいき,帰り際に寄藤晶子さんとお会いして抜き刷りの交換をしたくらいで私は帰宅。

4月1日(日)

渋谷イメージ・フォーラム 『はじまりの記憶 杉本博司
この日は映画の日。他にも観たい作品はけっこうあるのだが,前日にたまたまみつけたこの作品に急遽決定。この作品はレイトショー上映ということだが,前日から公開開始で,当分の間は午前中も1回上映があるという。レイトショーで映画を観るのは今けっこうきついので,午前の回があるうちに観なくては。タイトルにある杉本博司というのはニューヨークを活動の場とする現代芸術家。基本は写真芸術。私もつい最近まで全く名前も知らなかったが,リヒター関係の英語論文を読んでいて,名前が出てきたのだ。調べてみると,ニューヨークの自然史博物館に展示されている剥製を撮影した「ジオラマ」という作品や,蝋人形を撮影した「ポートレイト」という作品で知られるという。まさに,リヒターのフォト・ペインティングと通じるものがある。それなりに高齢の芸術家で,作品数も少なくないので,手っ取り早くその人物,その作品を知るにはこういうドキュメンタリー映画はありがたい。でも,場合によってはドキュメンタリー映画はへたな先入観を与えかねないが。ちなみに,ドキュメンタリー作品として本作は受賞もしているし,ナレーションを寺島しのぶがやっているというのも多少は信頼がおける。
ということで,結論からいうと素晴らしい芸術家だった。やはりこれもリヒターのように,写真家でありながらも画期的な芸術表現を求めて日々試行錯誤し,見事な形でそれを結実させる。ドキュメンタリーとしては彼が求めるものを明確にしすぎるところがあり,しかもそれを彼が日本人であるということに帰着させようとしすぎている感があるが,その辺を差し引いて観れば,なかなかよくできていると思う。寺島しのぶさんも,スクリーン上では視覚的に非常に存在感があるが,意外にも声そのものはくせがない。ナレーターとして,本作においては適役だったのではないか。

映画を終えて食事をし,献血ルームSHIBU2で成分献血。珍しく空いていて,予約もないのに午後の一番手だった。まあ,その後は混雑しない程度に入ってはいたが,最近はこんなものなのだろうか。

|

« 今年初ライヴ | トップページ | 定本 想像の共同体 »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/218863/54398147

この記事へのトラックバック一覧です: 学会発表:

« 今年初ライヴ | トップページ | 定本 想像の共同体 »