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風景学

中川 理 2008. 『風景学——風景と景観をめぐる歴史と現在』共立出版,205p.,3300円.

本書は「造形ライブラリー」というシリーズものの6巻。カバーに印刷されている,既刊の5巻までを示してみよう。
古山正雄『造形数理』
エルウィン・ビライ『素材の美学』
加藤直樹・大崎 純・谷 明勲『建築システム論』
岸 和郎『建築を旅する』
栗田 治『都市モデル読本』
ちょっと私が書名だけで内容が理解できるようなものではないが,建築を含む都市工学的な分野が中心だということだけは分かる。この著者の中川 理という名前だけは知っていたが,読んだことはなかった。それが敗因。本書はたまたまAmazonでみつけて,「なか見検索!」(目次など,一部がPDFで閲覧できる)があったので,目次を確認できたのだ。それによると,私が把握している風景・景観関係の議論をかなり網羅していることが分かった。Amzonのマーケットプレイス(中古品)にはあまり安価なものは出なく,買いためらっていたが,風景研究をやるのに無視はできない存在だとは思っていた。当初よりも若干安くなった中古品が出たところで購入。もっとコンパクトな版かと思いきや,けっこう大判の変形でビックリ。とりあえず,目次を示しておこう。

1章 風景以前の「風景」
2章 風景の発見
3章 規範としての風景
4章 歴史が作る風景
5章 近代主義が作る眺め
6章 都市の風景化
7章 風景から景観へ
8章 集落と生活景
9章 郊外風景の没場所性
10章 仮構される風景
11章 生態的風景
12章 自分が風景になる

それぞれの章は4節か5節から成り立っていて,1節の長さは2〜4ページ。大判をうまく活用し(建築系の書籍にはよくあるが)下の余白に効果的に図版を掲載している。あとがきを読むと,本書の土台は半期の講義資料だという。最後にきて納得。前半はけっこう楽しめた。私がここ数年勉強している内容をおさらいするような形。しかし,後半になると段々その1節の短さが物足りない感じになってくる。
確かに,地理学者もアプルトンからベルク,トゥアンやレルフも登場するが,著者の基本は建築学であり,景観工学である。確かに,美学系の人が建築系の話を詳しくするのは難しく,一方で建築系の人はよく勉強をしていて,本書のように美学の話も一通りこなしているのは便利ではある。景観というのはその土地に住む人の見方ではなく,外部の人の価値観だという指摘は,ちょっと忘れていて新鮮だったことは確か。
しかし,やはり著者の得意分野は後半になって集中してくる建築や都市計画の分野であるが逆に私にとってはあまり楽しめない内容になってくる。そして,決定的に本書を読んできてちょっとだけ後悔したのは,著者はなんと『偽装するニッポン――公共施設のディズニーランダイゼーション』の著者だったということ。確かに,レルフの没場所性の議論の際に,レルフが没場所的な景観を批判した後に,何も解決策を提示していないことを「建設的ではない」といったりしていた。やはりあくまでもかれは住む人にとってよりよい建築物なり,町づくりをするということが責務にあるということだろうか。
まあ,それほど読むのに時間はかからなかったし,一応論文を書く際には本書に言及する必要はあると思うが,個人的な趣味からいうとあまり評価したくない本。

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