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思考のフロンティア ナショナリズム

姜 尚中 2001. 『ナショナリズム』岩波書店,161p.,1500円.

前にもちょっと書いたが,今非常勤先の講義でベネディクト・アンダーソンの『想像の共同体』を教科書にしている。このblogの読書日記でも改めて読んだ定本版について書いたが,人に説明しようと思ってじっくり読むと学ぶことが多く,やはり名著であることを改めて実感。
その講義の中間レポートとして課題図書ということで,決まったのが本書。実は私自身読んだことがなかったのだが,比較的薄くて読みやすいもの,そして著者が信用できるものをと思ったのが間違いだった。そういえば,この岩波書店の《思考のフロンティア》シリーズは他に1冊だけ持っている。岡 真理の『記憶/物語』だ。改めて考えれば,フロンティアなのだから,その分野の最先端という意味。とても学生に読ませるレベルではなかったのだ。
でも,それに気づいたのはもうレポートの告知をした後だったし,まあ学生ではとても歯が立たない難しい本を読ませるのもある意味で面白いかなと思い,変更はなし。ともかく私自身も読むことになった。とりあえず,目次を。

はじめに
I ナショナリズムの近代
II 「国体」ナショナリズムの思想とその変容
第1章 基本的な視座
第2章 「国体」思想のアルケオロジー
第3章 「国体」の近代
第4章 「国体」の弁証法
第5章 戦後「国体」のパラドクス
むすびにかえて
III 基本文献案内

レポートの課題図書として相応しくなかったのは,単に難解だからではなく,本書はけっしてナショナリズムを論じていないからだ。確かに,それらしい主題の周縁をめぐってはいるけど,ナショナリズムらしきものが登場するのはIのみである。目次を読めば分かるように,本書は日本の「国体」論だ。
2冊しか読んでいないが,やはりこのシリーズはコンセプトがイマイチな気がする。ある主題の最前線の議論をこれほどコンパクトにまとめられるものであろうか。すでにそれらについて精通している読者にとっては,分かりやすい見取り図を提供しているかもしれないが,議論が非常に粗く,私のような読者でも読み飛ばしてしまうような書きぶりである。
そもそも,私は姜氏の文章をあまり読んだことがなかった。小文字の政治学(=ポリティクス)は私の研究テーマのなかに含めたいと思っているものだが,政治学の専門書というものもほとんど読んだことがない。姜氏が政治学界のなかでどんなポジションなのかも分からないので,私が単に彼が属する読書共同体とは馴染みがないのかもしれないが,かなり読みにくい本であった。
ただ,アンダーソンの『想像の共同体』のなかにも日本の近代化についての記述がけっこうあることを改めて認識し,日本については西川長夫『国境の越え方』でそれなりに学んだつもりだったが,アンダーソンはかなり視点が違って再認識させてくれるものだった。そういう意味では,本書もそれにそれなりの知識を追加してくれたと思う。

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