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家を買うということ

わが家の最寄り駅の一つ,東府中の駅近くには住宅展示場がある。先日,その近くで家族で昼食をとった後,帰ろうと思った時に天気雨にあった。雨宿りのつもりで住宅展示場のなかの一つの住宅にお邪魔する。一応ひとしきりお話を聞いたりしたのが,住友林業の家だった。こういうところに入ると,個人情報も含め,アンケート的なものを書くんですよね。その時は家を買うなんて事は全く現実味を帯びていなかったのだが,なんとその営業の人は,私が不在の時に家まで来て,妻にいろいろと説明をしていたらしい。そんなことで,妻は少しその気になってしまい,そして一つ気になると当分そのことについて頭がいっぱいになってしまう彼女のことなので,当分そういう雰囲気のわが家です。

そもそも,私はかつての都市住宅公団のいわゆる5階建ての団地に育った。同じ環境で育っても兄弟で考え方は違うもので,兄は一戸建てへの憧れが強く,20歳台で新築住宅を購入し,既にローンは終了したという。一方の私は現在の不安定な状態(定職に就いていない→住む場所も移動する可能性あり)も含め,家を買うことには憧れはない。もちろん,正直なところでは憧れはあるが,それは日本という社会に育った以上,刷り込まれたものとして理解している。住宅空間に関しては研究上の批判的な意識もあり,なぜ社会通念として出来上がった間取りに自分たちの生活様式を合わせなくてはならないのかという疑問がある。私は家族を持ったが,それでも私の両親は私が今住んでいる部屋よりも狭い部屋で男2人を育てた。家も車も持たない,詳しくは聞いたことがないがローン,すなわち借金というものを基本的に両親はしなかったのだと思う。

一方,私は既に借金がある。父親が死んだのが大学2年生の時。その後,学部で2年間,大学院では修士で2年,博士で3年間奨学金を借りた。それは当時は大学などの研究・教育機関に就職すればチャラになるといわれていたが,結局は未だに就職できていないので,返済している。ようやく来年あたりに完済する予定だ。ということもあって,たとえローンであろうとも借金というものには非常に抵抗がある。今のままの人生では決して大金などを手にすることはできないのだから,せめてその日暮らしでもささやかに暮らしていきたいというのが本当のところ。

もちろん,家族ができたら,そうした人生プランは自分だけのものではない。妻と一緒に息子の成長を見届けながら何十年も生活していくのだ。しかし,それに関しても考えはある。一軒家の持ち家で育つ子どもはもちろん家庭環境的には良いと思う。子どもの頃の生活環境はその人の人生の基礎となる。兄のように,狭い空間での生活を知った上で,自分の財力でその上を目指すのはいいと思うが,逆はどうかと思うのだ。賃貸住宅は基本的に共同生活であり,狭い空間,間借り,燐家との関係,そういう生活を基礎とするのは悪くないと思う。といっても,人は順応するものだからそんなに気にしなくてもいいのかもしれないが。地方の大きな家で育って,今は都会の狭い部屋で一人暮らしをしている人など無数にいるのだから。

ただ,今回いろいろな話を聞いたり,調べたことによれば,住宅ローンというのはいろいろあり,またうまくできている。それは常識なのかもしれないが,住宅ローンには生命保険が一緒になっているのだという。つまり,支払い主が途中で死んでしまった場合,未支払い分の代金分がその保険金によって補填されるのだと。そのことを知って,少し前向きになり,住む場所さえ固定することができれば,マイホーム購入に前向きになってみたいと思う。

10月6日(土)

この日は妻が土曜日出勤なので,私は講義後,映画を2本観ることにした。

渋谷シネクイント 『鍵泥棒のメソッド

『運命じゃない人』『アフタースクール』の内田けんじ監督作品。前作に引き続き堺 雅人に加え,最近さらに映画出演が増えている香川照之に,ヒロインが広末涼子というキャスティングはかなり無難。後日観た妻は「意外性がなかった」とあまり評価が高くなかったが,今から思うとその感想はキャスティングを含めてだったかもしれない。広末涼子はなかなか面白いが,男の主演2人はあまりにも映画に出過ぎているので,彼のようなオリジナル脚本で,テンポと物語展開の魅力を持ってすれば,皆が忘れかけているような,あるいはまだあまり知られてないような俳優を起用して,脚光を浴びさせるというのも映画界にとっては得るものが多いかもしれない。なんといっても,『運命じゃない人』の主演,中村靖日の起用は素晴らしかった(といっても,あの作品では監督もほぼ無名だったわけだが)。

といっても,私はすっかり内田けんじワールドに魅了された。ほとんどリアリティのない設定を不自然さを感じさせない世界を作り出す技術,これこそが映画的エンタテイメントだと思う。確かに,観終わってから妻に意外性がないという感想を聞かされればそうかと思うが,少なくとも観ている間は十分に楽しめた。決して短くはない上映時間も飽きずに過ごすことができた。でも,ひょっとしたら本作は男性目線で面白いのかもしれない。ちなみに,広末涼子演じる女性の姉の役で小山田サユリさんが出演していたのは嬉しかった。

渋谷 ル・シネマ 『わたしたちの宣戦布告

続いて観たのはフランス映画。『マルタ...,マルタ』という10年前の不思議な映画に出演していたので,顔を覚えていたが,ヴァレリー・ドンゼッリという女優さんが主演している,だけでなく,なんと監督も彼女なのだ。しかも,自身の経験を元にした夫婦の物語を,なんと当時の夫であったジェレミー・エルカイムとともに名前こそフィクションにしている(ロメオとジュリエット)ものの,夫婦を演じているのだ。

そして,彼らの経験とは,彼らに授かった息子が悪性の小児がんに侵されていたということ。本作のタイトルは,子どもの病気と闘う意思表明みたいなもの。作品中でも,ちょうど子どもが生まれた頃に米国による対テロ戦争の幕開けのニュースをラジオで聴くシーンがあった。前にも『少年は残酷な弓を射る』の感想で書いたが,この種の実話を日本で映画化するとなれば,深刻な映画になること間違いないが,本作はこの内容でスタイリッシュな恋愛映画に仕上げている。まあ,当事者による監督・主演だからなしえる技か。それにしても,逆にいうと,その時の感情を知っている本人が,それを演技として再現することは,赤の他人が想像上で演じることより難しいのかもしれないと思う。

この映画は幼い子どもを持つ親たちにかなり低い確率で起こった悲劇だが,生まれたての頃のシーンは子育ての経験がある親たちなら納得できるものでもある。最終的にかれらの子どもは恐れている以上の難病だったが,自分の子どもが正常なのか,あるいは何かの病気にかかっていないかという不安は常につきまとう。そう,程度の差こそあれ,これは誰にでも起こりえる,あるいは経験しうる物語なのだ。

でも,それにしてもこの2人はタバコの吸い過ぎだよ。まあ,タバコくらいでとは思うが,多少は影響があったんじゃない,と思わせる演出(?)だった。

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コメント

 『鍵泥棒のメソッド』
>でも,ひょっとしたら本作は男性目線で面白いのかもしれない。
 それは言えるかもしれませんね。
 とにかく、あのラストには気持ちよくヤラレました。
  
>ちなみに,広末涼子演じる女性の姉の役で小山田サユリさんが出演していたのは嬉しかった。
 同様の事を、私も感想日記に書きました(笑)。
   ※※※※※※
『わたしたちの宣戦布告』をご覧になるとは、さすが!
全然ノーマークだったのですが、医師をされているマイミクさんがかなり褒めておられたので、機会があれば是非観ようと思っているのです。
青春18きっぷの使える年末年始に神戸で公開されそうなので、足を伸ばすことになるかもしれません。

投稿: 岡山のTOM | 2012年10月14日 (日) 17時06分

TOMさん

小山田サユリさんは『ミラクルバナナ』という映画がとても印象深かったんですよね。それまで、名前と顔は知っていましたが、この作品ではとても魅力的で。
その後、行定監督の『セブンスアニバーサリー』のDVDをたまたま見つけて購入して鑑賞、といった感じです。

けっこう魅力的な俳優ってけっこういるのに、製作者側はどうしても人気のある俳優に群がってしまうというのが残念ですよね。

投稿: ナルセ | 2012年10月16日 (火) 13時42分

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