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風景画の出現

越 宏一 2004. 『風景画の出現――ヨーロッパ美術史講義』岩波書店,179p.,2800円.

岩波書店は継続的に市民セミナーを開催しているらしいが,本書も副題にあるように,そうした講義内容をまとめたもの。一般的に風景画の成立はルネサンス期の線遠近法の確立と北方ルネサンス的絵画傾向とが平行したものとして理解されるが,本書が扱うのは16世紀まで。まあ,簡単にいえば風景画前史とでもいえる内容。しかも,イタリア・ルネサンスについてはあとがきで補遺として数頁が割り当てられているにすぎない。私はすっかり,有り体の風景画史と思って読み始めたので,思いの外得るものは大きかった。まずは目次から。

はじめに――古代ギリシア
1 古代ローマ
2 古代末期・中世初期
3 中世盛期
4 ジョットおよびアッシージのフランチェスコ伝壁画
5 ドゥッチオ
6 ロレンツェッティ
7 ピュセルとその工房
8 ピュセル以後ランブール兄弟以前のフランス
9 ランブール兄弟の『ベリー公の美しき時祷書』
10 トレントの〈鷲の塔〉の壁画
11 『タクイヌム・サニターティス』
12 〈月暦詩〉
13 ランブール兄弟の『ベリー公のいとも豪華なる時祷書』
14 『トリノ時祷書』
15 ファン・アイク兄弟
16 〈ブルゴーニュのマリアの画家〉
17 パティニール
18 アルトドルファー
おわりに――デューラー

読む前に参考にする目次としては分かりづらいが,講義が18回あったということだろうか。講義は恐らく絵画作品をスライドかなにかで映し出しながらの魅力的なものだっただろう。といっても,本書にも多くの図版が収録され,これまで観たことのある作品も少なくなかった。
著者は風景画の専門家というわけではなく,ヨーロッパ中世美術史とのこと。恐らく本人も見慣れた作品群を風景という主題から改めて調査することで発見することは多かったと思う。とても刺激的な読書だった。

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