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地下鉄のミュージシャン

スージー・J・タネンバウム著,宮入恭平訳 2009. 『地下鉄のミュージシャン――ニューヨークにおける音楽と政治』朝日新聞出版,373p.,2900円.

訳者は『ライブハウス文化論』の著者。私の下北沢論文の時はお世話になった著書で,論文発表後連絡も取ったが,なんと私が非常勤講師として通っている東京経済大学の大学院を出たとのこと。大学はハワイ大学とのことだが,大学院は日本だったんですね。まあ,本書のことは以前から知ってはいたのだが,宮入さんが訳しているということで,Amazonで安く中古を購入した。まずは目次。

まえがき
序章 地下鉄への冒険
パート1 地下鉄で音楽を奏でて
第1章 セットアップ
第2章 ビートがはじまる 歴史
第3章 パートナー 地下鉄のミュージシャンとオーディエンス
第4章 境界と架け橋 公共空間での関係
パート2 地下鉄の調和を求めて
第5章 ミュージック・アンダー・ニューヨーク 公式な援助
第6章 音楽と沈黙 地下鉄音楽の規制
第7章 巡回区域 交通警察
第8章 音楽と仕事 地下鉄の労働者
第9章 変化の期待
付録1 地下鉄のホームレス
付録2 ニューヨークのストリート音楽

原著者はどうやら大学院時代辺りで偶然からニューヨークの地下鉄で演奏するミュージシャンを研究するようになった女性のようだ。本書は4年間くらいの調査が元になっているとのこと。私の下北沢論文を投稿しても,学会編集委員会は本書のことをなにもいってこなかったが,やはりその論文に反映したかった本。ポピュラー音楽研究のなかでもストリートミュージシャンなどを対象とする際の必読書だといえる。
本書はそれなりの厚さがあり,その記述は多岐にわたっている。パート1では意外に歴史は古い地下鉄での音楽演奏の歴史が語られるが,これは地下鉄の歴史そのものでもある。また,付録にはストリート音楽そのものについての記述もあるが,本書はさまざまな社会学的テーマの交差点に位置するものだといえる。地下鉄,音楽家,オーディエンス,そして公共空間でのミュージシャンがオーディエンスからの「施し」で生計を立てているため,ホームレスというテーマもそこに加わってくる。そしてまた,ホームレスと類似した存在としてのミュージシャンをめぐっては,公共空間の統制・管理という問題も生じてくる。そのテーマについてはパート2で論じられる。
ただし,本書は社会学的なテーマを深く掘り下げるという点からすれば多少物足りない。地下鉄のミュージシャンをめぐる問題については詳しく知識を得ることができるが,著者はやはりかなりかれらの立場に加担しており,根本的な社会批判にはなりえていない,というところは本書の限界だが,それ以上に本書の成果は大きいといえる。

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