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アルブレヒト・デューラー

アーウィン・パノフスキー著,中森義宗・清水 忠訳 1984. 『アルブレヒト・デューラー――生涯と芸術』日貿出版社, 319(本文)+28(索引)+図版,円.

パノフスキーの著作はできるだけ集めている。ある日、国立の古書店で見つけた本書。本書の存在は全く知らなかった。さほど高くはなかったが、けっこう大判で重たいので値段だけ覚えてその場は帰宅した。早速Amazonで中古品を調べると同じような値段。もう少し安値で出るのを待って購入。会社に持ってきて昼休みに少しずつ読んでいたが、別にやることがあったりして、数ヶ月かかってようやく読破。まずは目次から。

第一章 待弟時代と若き日の遍歴 1448-1495年

第二章 旺盛な制作力の5年間 1495-1500年

第三章 合理的総合の5年間 1500-1505年

第四章 イタリア再訪と彩色の極致 1505-1510/11年

第五章 版画芸術の新しい探求――銅版画の極致 1507/11-1514年

第六章 マクシミリアン一世のためのデューラーの活動――装飾様式 1512/13-1518/19年

第七章 1519年の転機――ネーデルラントへの旅 1520-1521年――最後の作品群 1521-1528年

第八章 美術理論家としてのデューラー

補遺 エラスムスと視覚芸術

補遺は訳者がパノフスキーの遺稿を本書に訳出したもの。第八章は別として、本書の副題にもあるように、半分は伝記的に生涯を時系列的になぞって構成されている。しかし、美術史家であるパノフスキーだから、いわゆる伝記的著作ではない。300以上の図版を掲載し(デューラーのものではないものも含む)、デューラー作品の図像学分析が中心となっている。

もちろん本書の分析も素晴らしいのだが、いままで知らなかった多くのデューラー作品に触れることで驚きと刺激に満ちた読書だった。たまたま、今度『地理学評論』に掲載される風景芸術に関する論文を学会編集とやりとりするなかで読んでいたので、本書も引用することができた。風景画と遠近法は切り離せない。どちらもルネサンス期に確立していくが、遠近法の発達は南欧のイタリアで、風景画の誕生は北欧ネーデルラントといわれている。デューラーはその中間のドイツの人間だが、本書にもあるように若き日の遍歴としてイタリアを訪れ、遠近法を学ぶ。風景画的主題はデューラーはかつてから手がけていたが、イタリアからの帰路でその画面構成は大きく変化するという。そして、その後はあまり風景的主題を描かなくなった。

第七章で詳しく論じられているが、デューラーは遠近法を用いた絵画制作の手法を手引書として出版している。そのことが遠近法的風景画の発展に大きく寄与していると思っていたのだが、実際はそうでもないらしい。でも、ともかく遠近法に基づいて風景画を描いた人物としてはデューラーはかなり初期の人物だということは間違いないようだ。

もちろん、本書を風景画について学ぶことだけに限定するのは不十分だ。何よりも、その図像学的分析は素晴らしい。というか、著者の博学によって、デューラーの芸術的、思想的源泉を場合によっては古代まで遡って突き止めていくさまは圧巻だ。そして、デューラー作品に描かれた無数の図像。この天才芸術家に対峙できるのはこの天才美術史家のみである、そんな私自身の才のなさを痛感させられる読書でした。

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