美と崇高との感情性に関する観察
イマヌエル・カント著,上野直昭訳 1948. 『美と崇高との感情性に関する観察』岩波書店,82p.,100円.
実はカントの本をきちんと1冊読むのは初めて。2010年に『人文地理』に書いた論文では崇高論を展開しているにもかかわらず,必読書の本書は読んでいなかった。恥ずかしい限り。いつも通り目次から。
第1章 崇高と美との感情性の別々の対象について
第2章 一般人類に於ける崇高と美との性状について
第3章 両性相互関係に於ける崇高と美との区別について
第4章 崇高と美との異なる感情性に基づく限りに於ての国民性について
訳者あとがきにも書いてあるが,読んでみればすぐに分かる。本書がカント特有の(といっても他の主著をきちんと読んでいない私だから,カントは一般的にそういわれているという次元ではあるが)綿密な哲学的論考ではない。美と崇高の考え方はエドモンド・バークを薄めたようなものだし,それを頼りに男女の性別とか国民性とかの性質の区別にあてはめていくという,現代の日本人論とか文化論とかでよく使われる論法。
読みやすくはあるが,決してこの読書から何かが得られるわけではない。しかし,訳者あとがきに書いてあるように,カントはほとんど旅行もせずにドイツの一都市で生涯を終えたということを考え併せると,日本人の国民性についても論じているというのは,当時としては非常に優れた情報収集能力であることは確かだ。
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